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第208話
夜はゆっくり眠って、朝はすんなりと起きた。
相変わらず俺を抱きしめて寝る偉成。その腕から抜け出して、部屋にある小さな······とは言っても十分広いキッチンで朝食を作る。
お義母さんと特訓した料理。
朝から頑張っちゃうぞ!と色々作ってみて、そして上手くできたのが嬉しくて寝ている偉成に飛び乗った。
「ゔ······っ!千紘······?」
「ご飯できたよ!起きて!」
「ご飯······?ああ、ありがとう······。その前に顔洗ってくる。」
偉成の上から退くと、すぐに偉成は起きて顔を洗いに洗面所に移動した。俺はご飯をテーブルに並べて満足して、ソファーでひと休みする。
「こんなに作ったのか」
「凄いでしょ」
戻ってきた偉成がご飯を見てそう言った。凄いでしょ?褒めてくれていいんだよ!そう思いながらそっと近づいてみる。
「朝から豪華だな。」
「うんうん、褒めて!」
「ん?ああ。よくやった。ありがとう。」
「よくやったって何!」
何でそんなに上から目線なんだ。驚いちゃった。でもきっと偉成はそんなこと考えてないから、気にしないでおくのが1番。
「はい、座って。」
「ああ」
椅子に座って手を合わせる。
今日は楽しい日にするんだ。
もう少しで夏休みが終わっちゃう。何か思い出を作るのもいいな。
「偉成、どこか行かない?」
「ん?どこに行きたいんだ」
「思い出作れるところ!」
「······どこだそれは」
ぶっちゃけ、偉成と一緒にいればどこだって思い出の場所になるんだろうけど、何だかちょっとだけトキメキが欲しい。
「わかった!海に行こう!」
「海?昼間にか?泳ぐのか?」
「ううん、暑いから夜。」
「わかった。それなら賛成だ。」
基本俺のしたいようにさせてくれるけど、暑いのは嫌らしい。
夜が楽しみになって、ニヤニヤしていると偉成に凝視されて「見ないで!」と言っておいた。
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