213 / 876

第213話 千紘side

もう夏休みが終わる。 長かった休みも、今日で最後だ。 「1回家に帰ろうかなって。」 「そうだな。荷物もあるだろうし、それなら送っていくよ。」 「いいよ、自分1人で帰れるから!」 荷物を準備し終わると同時に、偉成に肩を軽く叩かれる。 「俺が送りたい。千紘のことが心配だ。」 「······何も心配することないと思うけど?」 「ある。例えば電車に乗るなら痴漢にあったり······」 「馬鹿。俺は男だよ。痴漢になんて遭わないよ。」 そう笑って返すと、偉成が突然怒り出した。そして俺を壁に押し付けて、体をいやらしく触ってくる。 「っ、ちょっと!」 「千紘は男だがオメガだ。人よりいやらしい体つきをしてる!」 「ぁ、もう、やだ!やめてよっ!」 「ダメだ。千紘が分かるまでやめない。」 お尻を揉まれて体がビクビクしちゃう。こんなことしてる場合じゃないのに。 「わ、わかった、わかったから!」 「何がわかったんだ」 「ぁ、ンッ!」 後孔を服の上からぐっと押される。 偉成の腕を掴んで「怒るよっ!」と言うとその力が緩まった。 「こんなことされても嬉しくないから!今すぐ離さないともう口利かない!」 「······何で俺が怒られてるのかわからん」 「わかるだろ!いい加減にして!」 「······俺が怒っていたのに」 ブツブツと文句を言う偉成。文句を言いたいのは俺の方だ。 「1週間お触り禁止!」 「なっ!」 「じゃあ、俺は帰ります。また学校でね。」 「千紘!お触り禁止って何だ!撤回してくれ!」 「しません!」 荷物を持って部屋を出る。 偉成の「千紘ー!!」という声が聞こえてきても無視をした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!