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第214話
実家に帰るのは少し緊張する。
この前ちゃんと話はできたけど、それでもまだドキドキしていた。
電車では痴漢されることも無く、ガタガタと揺られて最寄り駅に着いた。しばらく歩いて実家の前まで来て、インターホンを鳴らす。
「はーい!」
玄関が開いて母さんが出てきた。
俺を見て優しく笑って家に招いてくれる。
「千紘の好きなハンバーグ作るわよ!しかも煮込み!」
「やった!」
「荷物片付けておいで。明日から学校でしょう?今日帰らなくて良かったの?」
「家からも通える距離だし、間に合うよ。だから大丈夫。」
自分の部屋に荷物を置きに行って、リビングに戻る。
「偉成君は?もう寮に戻っちゃったの?」
「ううん、偉成も明日直接学校に行くって。」
「······あら、何だか冷たい感じがするけど、喧嘩でもしたの?」
「してないよ。」
喧嘩じゃない。ただお触り禁止にしただけだ。
「えー、そう?」
「うん。ちょっと文句言っただけ。」
「文句ねぇ。あんなに完璧に見えるのにやっぱり腹が立つことはあるの?」
「あるよ!母さんだって父さんに腹立つことあるでしょ?」
「あるわねぇ。」
母さんがニコニコ笑ってる。
俺が恋人のことを話しているからか、楽しんでいるんだと思う。
「今日は父さんは?」
「仕事よ。でも今日は早く帰ってくるって。千紘が帰って来るって伝えたらね。」
「嘘!」
「本当よ。あの人も偉成君に会って変わったのよ。」
自然と口角が上がる。
そういう変化はすごく嬉しい。俺も父さんにもっと歩み寄ろう。そうすれば今までよりも良い親子関係になれるはずだから。
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