225 / 876

第225話

*** あれから偉成は俺から距離を置くようになってしまった。 ただ、一緒にいる時間は増えた。結局生徒会のお手伝いをすることになって、俺と、匡も一緒に放課後生徒会室で雑用をこなす。 「文化祭の準備がそろそろ始まる。」 生徒会室で偉成がそう言って、俺達にプリントを配った。 「教師達に渡す文化祭についての事が書いてある。不明点があれば言ってくれ。」 「特にないな」 すぐにプリントを見た高梨先輩がそう言って、プリントを偉成に返す。 「じゃあこれで渡してくる······いや、千紘、渡してきてもらってもいいか?」 「もちろん!」 笑顔で偉成から受け取る。 あんまり偉成と触れ合えてないから、すこしでも距離が縮まるように。 「俺もついてこー!」 そう言って立ち上がったのは高良先輩。 「······別にいいのに」 「そんな寂しいこと言わないでよ」 「高良は行くな」 部屋を出ようとしたら、偉成から厳しい声が飛んできた。 「お前には他にやってもらうことがある。」 「千紘ちゃんと2人きりにしたくないんでしょ。」 「違う。いいからそれは千紘に任せてお前はここに残れ。」 「ちぇー、ごめんね千紘ちゃん。俺も行きたかったんだけどさぁ······」 いいえ、全く。 その意味を込めて笑顔で首を左右に振る。 「じゃあ、渡してきます!」 生徒会室を出て職員室に向かう。 もう文化祭の準備が始まるんだなぁ。ワクワクするけど、それまでに偉成が元に戻ってるかはわからないから、ちょっと寂しくもある。 「失礼します!」 職員室に入って近くにいた先生にプリントを渡した。生徒会からですって言うの、ちょっと面白いかも。 「そう言えば松舞は生徒会に入ったんだなぁ。」 「あ、先生」 担任の麻倉先生。プリントを見ながら声を掛けてくれる。 「お前の番は赤目だし、先生は嬉しいぞ。」 「え、何でですか?」 「生徒会長の赤目は冷たいって印象があってな、それがお前の前だとデレデレだって聞いた。人を変えるって凄いことだよ。」 「確かに······。初めて偉成を見た時冷たい感じがしたかも······」 今になって気付くことが沢山ある。 冷たかった偉成があれだけ甘くなってるのなら、俺がそれを変えていったってこと。 「ふふっ」 「お、嬉しそうだな。」 「はい、嬉しいです。」 本当に俺の偉成になっていってるんだな。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!