226 / 876
第226話
先生と少しお話をして生徒会室に戻った。
部屋に入った途端、何故か険悪なムードで1人離れて傍観していた匡の腕を掴む。
「何があったの?」
「高良先輩が余計な事言った」
「え、また······?」
東條先輩は高良先輩を抑えて、高梨先輩が偉成と話をしている。
「お前の事だよ。まだ自分自身が選んだと信じてるのかって、兄貴に言ったんだ。」
「あ······」
「兄貴はそうだって言った。でもそう言うと高良先輩も反撃して······面倒くせぇ。」
匡がイライラとしているのが目に見えてわかって、どうするのが1番かはわからなかったけど、とにかく偉成の所に行ってそっと抱き締めた。
「大丈夫?」
「······ああ」
偉成から香る匂いが少し柔らかくなった。
「疲れたでしょ。ちょっと外に出ようよ。高梨先輩、いいですか?」
「ああ。なんなら今日はそのまま帰れ。あとは俺が進めておくから。」
カバンを投げて渡される。それを受け取って偉成の手を持ち、椅子から立たせた。
「偉成!今日は俺がご飯作るからね!楽しみにしててね!」
「作ってくれるのか。嬉しいな。」
少しだけ、下手くそだけど笑ってくれてる。
早く寮に戻って休ませてあげないと、忙しさと余計な悩み事で頭が混乱して疲れてしまってるんだ。
「千紘、俺は1人で歩けるぞ。」
「んー、ダメ!俺が偉成に触ってたい。」
帰るまで、ずっと偉成と手を繋いでおこう。
少し手が冷たい。まだ暑い季節なのに。
「寒いの?」
「いや、寒くないよ。」
「そう。今日のご飯は何にしようかなぁ。」
少しでも気が紛れるように、ほかのことを考えさせる。
「鮭があった」
「あ、じゃあ焼き鮭にしようか。美味しいよね」
「そうだな」
いつもより遅いテンポで会話をしながら寮に戻る。いつもずっと長く時間がかかったように思った。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!