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第228話
言っていた通り鮭を焼いた。
晩御飯をお腹いっぱいになるまで食べて、膨れたお腹のまま偉成とお風呂に入る。だから少し恥ずかしい。
「腹が膨れてる。可愛いな。そんなに食べたのか?」
「食べすぎちゃった」
お腹を撫でると偉成はくすくす笑って、俺の手をとる。
「たくさん食べるのはいいことだ。もう少し太ってもいいぞ」
「えー!でも筋肉つけたい。」
「オメガは筋肉が付きにくいって聞いたことがある。無理な筋トレはするなよ」
「つけたいだけで筋トレはしないよ。疲れるもん。理想と現実は違うんだよ」
「そうか」
浴槽に浸かりながら楽しくてくすくす笑う。
偉成にお腹を触られて擽ったい。
「早く卒業したいな」
「どうして?」
その手を取って繋ぐ。
「結婚ができるし、それに子供だって······」
「子供かぁ。それは楽しみだよね。俺も早く自分の子供を抱っこしたいな。きっとモチモチしてて癒されるんだよ。」
「俺も抱っこしたい。先にパパって言うように教えるんだ」
「ずるい!先に言うのはママだよ!」
そんな未来の想像をするのが楽しい。
「ママって呼んでもらうかお母さんか悩むなぁ。」
「確かに。お父さんでもいいな······」
何だか急に偉成への愛しさが膨れて、振り返りキスをした。
「ん······はぁ、ぁ······」
舌を絡めると頭の奥がジンっと熱くなる。
蕩けるような優しいキスがもっと欲しくて、体ごと振り返り、偉成の首に腕を回して抱き着いた。
「逆上せるぞ」
「大丈夫」
唇を離し、額をコツっと合わせる。
鼻先が触れ合って、またくすくす笑っちゃう。
「キス、気持ちいいね。」
「ああ。」
また唇が合わさり、熱を分け合う。
さっきまでの偉成の不安が、少しでも薄らいでいてくれたらと思いながら。
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