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第232話

正直千紘と少しだけ距離をとっていた。 それは自分の中でまだ整理がついていないからだ。 高良に言われたことがショックで、上手く頭が機能しなかった。でも忙しさで体も心も疲れて、そんな時は千紘にはどうしても触りたくなる。 「いただきます」 「いただきます」 手を合わせて箸を持ち、出来上がった飯を食べる。 出来たてほやほやのそれは熱いけれど美味しい。 「そういえば匡と優生君が付き合ったって聞いた?」 「ん゛っ!?っ、聞いてない。」 飲み込む時に急にそんな話をされて驚いた。優生君······確か千紘と匡と仲のいいオメガだ。 「夏休みに色々あって付き合ったって。でも優生君はまだ首輪してたなぁ。番にはなってないのかも。」 「そうか······。まあ、2人がしたいようにすればいいと思う。」 「そうだね。なんか······今の偉成は匡のお兄ちゃんって感じがした。」 「実際そうなんだがな。」 飯を食べ終えて、皿洗いをさっさと済ませ風呂に入る。千紘は準備をしたいからと、先に俺1人で風呂に入らされた。 ポカポカに温まって風呂から上がり、服を着てリビングに行くと、俺を目に入れた途端千紘は立ち上がって風呂に行く。 「1人で待ってる時間って長いんだよな······」 テレビをつけて、画面をぼんやり眺める。 千紘はいつ上がってくるのだろうか。早く戻ってこないか、とずっと考えていた。 *** 「お待たせ」 テレビを見ていたら、後ろから抱き締められた。顔だけ振り返るとキスをされて、まだ少し濡れた千紘の髪に指を差し入れ舌を絡める。 「んっ、はぁ······ぁ、偉成、ベッド行こぉ······?」 体ごと振り返ってみると、千紘は服を着ていなかった。恥ずかしそうにバスタオルで体を隠して、そんな姿が愛らしい。 「ああ、行こうか。」 千紘の手を取ってベッドまで移動する。 ベッドに腰掛けた千紘にまたキスをして、ゆっくりと押し倒した。 「タオル、離して」 「んっ、ちょっと恥ずかしい······」 「もう何度も千紘の体見てるよ。恥ずかしくない。」 「っ!それでも恥ずかしいのっ、偉成も脱いで」 千紘に服を脱がされて、下着だけになる。 千紘の首筋を撫でて、そこに唇を寄せる。 「ぁ······っ!」 「は、綺麗についたな」 「キスマーク付けたの······?隠せないじゃんか」 「隠さなくていいんだよ」 千紘がもう既に誰かのものだと分かれば、近づく奴らもいなくなる。

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