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第237話 千紘side
***
文化祭もあと少しと迫ってきた。
だんだんと余裕もなくなって、準備も慌ただしい。
「千紘!焦げてる!」
「わっ!ごめん!」
フライパンの中にあった生地が焦げている。
匡が隣で溜息を吐いた。
「あーあ、それもう捨てるしかないな。」
「ごめん······」
料理の練習をしてたら焦げ茶って悲しい。
ここから見える優生君は可愛らしい服を着せられて、接客の練習をしてる。
「優生君ってさ、首輪してるよね。」
「してるな」
「番にはなってないの?」
「いや、成った。」
えっ、と思って匡を凝視する。
「首輪を着けてるのは恥ずかしいからだって。痕が薄くなるまでは首輪をしてるって。俺は少し寂しいけどな。」
「そんなに強い力で噛んだの?」
「多分。制御できなかったから。」
「あらら、そりゃあ痕が濃いかもね。見られるのは恥ずかしいかも。」
寂しいかもしれないけど、優生君の中では恥ずかしさが勝っちゃったんだ。
「千紘は着けてないだろ。痕もぎっしり着いてる」
「まあ俺は痕について恥ずかしいって思わなかったからね。人によって違うよ、やっぱり。」
「そういうもんか?」
「うん。にしても匡、優生君のあの格好は許すの?スカートだけど。彼氏的には許可は出してあるの?」
ひらひらのスカートを履いて、接客の練習でお辞儀をしてる。スカートは少し短めで、裾を気にしてる優生君と、そんな優生君をジロジロと見るクラスメイト達。
「あ?許してねえな」
「今のこの状況に対しては怒りはないの?」
「いや、今怒ってる。······悪いがここは任せた。」
「いってらっしゃい」
匡が優生君の所に行って、優生君を背中に隠しクラスメイト達を威嚇してる。
「優生の足見てんじゃねえ!!」
「ぶはっ!」
そんな怒り方するんだ。
ちょっと予想外で笑える。
「おい、衣装係誰だ!優生のスカートはせめてもう少し長くしろ!」
怒ってる匡と戸惑ってる優生君。
なんだか可愛いカップルだなぁ。
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