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第242話

ちょっと動いただけで体がだるい。 これ、本格的にまずいかも。 文化祭の準備で今日は授業はない。 「千紘君、休んでたら?匡君から発情期が近いって聞いたよ。少ししんどそうだし······」 「ううん、大丈夫!」 気にすればするほど、そうなってしまう気がして、違うことを考える。 あー、なんか嫌な予感がするんだよな。 本当に文化祭と丸かぶりするかもしれない。体がカッカとしてきて、唇をガリッと噛む。 「千紘、血出てる。」 「あ······ごめん。」 「いいけど、無理するな。顔ちょっと赤いぞ。」 「······高校入って初めての文化祭だから、発情期と被りたくなかったんだけどなぁ。」 「ああ、大丈夫だから、少し休め。」 お言葉に甘えて休ませてもらうことにした。邪魔にならないところで椅子に座ってみんなの様子を眺める。 「はぁ······」 本当、発情期って厄介だ。 壁に寄りかかって目を閉じる。こうしてると少し体も落ち着く。 今日は偉成と離れて寝た方がいいのかもしれない。隣に番のアルファがいると誘発されそう。そんな話は聞いたことないけど。 「千紘君見て!スカート長くしてもらった!」 「ふふっ、可愛い」 優生君に呼ばれて目を開けると、衣装に着替えて俺の前でクルリと回る。ふんわりと風が来た。 「よかったね、匡も怒らないで済むね。」 「うん!」 俺が暇じゃないようにしてくれてるのかなぁ。迷惑をかけてるなら、本当に申し訳がない。 「千紘」 「えっ······」 急に偉成の声がして、振り返るとやっぱりそこには偉成が立っていた。 「何してるの?」 「文化祭前の最後の見回りだ。何も問題は起きてないか?」 「うん」 「······体は?大丈夫か?」 偉成が顔を覗き込んでくる。 ああ、綺麗な顔だなぁ。このままキスして押し倒されて、沢山触られたい。 いやいや!待って!今はそんなこと考える時じゃない! 「う、うん、大丈夫!」 「ん?顔が赤いぞ」 「気のせい!」 偉成から顔を背けて、変な考えを頭から消した。

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