244 / 876

第244話 偉成side

昨日早く眠った千紘は、今朝起きるとケロッとしていた。 抑制剤が効いているのか、特に変わったところもなくて、昨日よりもずっと元気だ。 「文化祭だよ!楽しみ!」 「そうだな」 「偉成の所も回るからね!」 「待ってるよ。」 千紘にとっては高校に入って初めての文化祭。楽しみで仕方ないようで、はしゃいでいる姿が可愛らしい。 「偉成と一緒に回ったりしたいな」 「なら時間を合わそう。」 「俺午後なら空いてるよ!」 「よかった。俺も午後なら空いてる。千紘の行きたいところに行こう」 「ありがとう」 千紘に抱きつかれて、その背中に俺も腕を回す。 「さあ、そろそろ行かないとな。」 「そうだね」 いつもより少し早めの登校時間。 生徒会としての準備もあって、今日は少し忙しい。 一緒に寮を出て、千紘を教室まで送り、俺は生徒会室に向かう。 「偉成、予定通り校門を開ける。」 「ああ」 生徒会室に入ると同時くらいに誉にそう言われて頷いた。 全部は予定通り、予定外の事は起きてくれるなと強く思う。 部屋には全員が揃っていて、すぐに最終確認をする。 「何かあれば直ぐに連絡すること。外部の人間でオメガがいて、もし発情したなら直ぐにあの部屋に入れるように。抑制剤は飲んでるか?」 「ああ、飲んでる」 「飲み忘れたー!」 「高良、お前······。ここに置いてあるのを飲め」 東條が高良に薬と水を渡す。それを飲んだ高良は「ありがとね」と言って水を机に置いた。 「各自、店を見て回るついででいいから、何も起こってないか周りを見ていてくれ。それは教師陣にも伝えている。」 「わかった」 「了解!じゃあ俺もう行っていい?」 「ああ、解散。」 それぞれが部屋から出ていく。俺も最後に部屋を出て、自分の教室に向かった。 俺のクラスは、校舎外でご飯を提供しているらしい。自分のことばかりで必死になっていたから余りクラスのことに関われていない。 教室に行くと関野が居て、俺を見つけるや否や駆け寄ってきた。 「生徒会お疲れ様。一応お前は午前の担当だけど、何をしろとも言われてねえだろ?」 「ああ、何も聞いていない。」 「多分本当に裏方の仕事しかしなくて済むと思うぞ。それが終わったら姫さんの所か?」 「ああ、千紘と約束した。」 今日はそれが1番の楽しみだ。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!