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第246話

思った以上に繁盛している。 もうすぐお昼の時間。つまりは交代の時間。千紘とこれから楽しい時間を過ごせるんだ。 「よかったなぁ、そろそろ姫さんに会えるじゃん。」 「ああ。千紘の教室まで迎えに行く」 「仲良しだねえ。」 そして時間が来て、エプロンを脱ぎ捨てた。その時、急に甘い匂いがしだして鼻を抑える。 「おい、甘い匂いしないか?」 「しないけど」 関野の返事を聞いてハッとした。 オメガは発情期に入ると強烈なフェロモンを醸し出す。もし番がいたなら、それは番にしか感じない。 「千紘······」 もしかして、発情期に入ったのか!? 慌ててブースを抜けだそうとすると、スマートフォンが震えだした。画面を見ると匡からの電話。 「何だ!」 「千紘が発情した。今から寮に運ぶ」 「迎えに行く!」 「馬鹿か。兄貴が来たところで兄貴は千紘のフェロモンにあてられて動けなくなるだろ。寮で大人しくしてろ。ちゃんと運ぶから。」 ぐっと奥歯を噛む。 そうだ、俺が行ったところで足でまといになるだけだ。ここは匡に任せた方がいいに決まっている。 「っ、わかった······。」 「ああ、じゃあな。」 ここから千紘の教室までずっと離れているのに、この距離ですら甘い匂いがするんだ。抑制剤を飲んでいるのにこんな状態だなんて。 俺は急いで寮に戻って、千紘を迎えられるようにまた抑制剤を飲み、風呂を洗って沸かし、ベッドサイドにスポーツドリンクの入ったペットボトルを何本も用意した。そして1番肝心なゴムも。 だんだんと匂いが濃くなってくる。 千紘がここに向かってきているのがわかって、心臓がうるさく音を立て始めた。 「兄貴!開けろ!」 より一層匂いがきつくなって、それと同時に匡の声が聞こえた。ドアを開けると、一瞬で体の熱が上がった。 「ベッドまで運ぶ。上がるぞ」 「っ、······ぁ、ああ······」 千紘の発情期は2回目だ。初めてではないのに、上手く自分がコントロールできるかわからない。 匡の背中で顔を赤くし荒い呼吸を繰り返す千紘に酷く欲情する。

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