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第254話

前にも首輪を貰ったことはあるけど、それは番になる前の話。 偉成はその時もこうして真剣に選んでくれていたのかなと思う。 高いブランドのお店に入って首輪を睨みつける偉成は少し怖いとすら思える。 「ねえ、早くしようよ。」 「ダメだ。これは素材がいいがデザインはこっちの方がいい······。デザインに妥協するべきか?千紘の体を少しでも傷つけるのは許さないからな。」 「じゃあ素材重視にしてよ。デザインはシンプルなのならなんでもいいから」 「いや、妥協は許さない!」 なんだか偉成が面倒臭い。 疲れて壁に寄りかかると店員さんが椅子をくれて、そこに座り偉成を眺める。 「この素材でこのデザインはないのか?」 「はい。申し訳ありません。」 「そうか······」 見るからにガッカリしてる偉成は「特注は!?」と無茶を言う。 「偉成、もういいってば。」 「でもこっちの方が千紘に似合う······」 「ねえでも聞いて。俺ってさ、ほら、顔は整ってる方でしょ?何でも似合うよなぁって」 何とか偉成が諦めてくれるように、自分でも呆れ返る程の言葉を吐く。すると真面目な表情になった偉成が大きく頷いた。 いや、嘘だろ。 「そうだな。なら素材重視でこれにしよう。」 「あ······あはは、うん。そうしよう」 でも事が治まるなら万々歳だ。 足早にレジに向かった偉成は嬉嬉としていたけど、俺は首輪選びだけでどっと疲れたのだった。

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