255 / 876

第255話

その後は服を買いに行くことになった。 もう少しで寒くなるから、秋冬の服を何着か見繕うって。 「千紘、これ可愛いぞ!」 「わあ、本当だね。ねえ色違いある!偉成もこれ買おうよ!ペアルック!」 「そうだな。千紘とペアルック······これは見せつけるしかないな。」 「誰に?」 「高良に」 偉成の性格が歪んできてる。じーっと偉成を睨むと「悪い」と謝られた。 「ねえねえお腹すいたよ。」 「じゃあこれを買ったら昼御飯な。」 「うん!」 服を何着か手に取った偉成は会計をして、俺には1円も払わせてくれなかった。 「自分で買うのに」 「プレゼントだ」 「首輪もそうじゃんか。」 「いいだろ、滅多に出掛けたりしないんだ。千紘に物を贈れるのが嬉しくてたまらない。」 腰に腕が回されて引き寄せられる。とん、と肩が触れてそれが少し気恥しい。 「······ありがとう」 「ああ。」 頬にキスされて、顔が熱くなる。 外でこんなことするなんて破廉恥だ。 「顔が真っ赤だな」 「······外でそんなことするからじゃんか」 「見せつけてるんだ。可愛いからな」 今度は唇にキスされて、偉成の肩をぐっと押し体を離した。 「ご飯!」 「そうだな」 偉成が上品に笑う。 手を繋いで街を歩く。 お洒落なカフェに入って「ほら、先に見ろ。」とメニューをくれた偉成に甘えて、先にメニューを見る。 「ねえオムライス食べたい」 「それにするか?」 「でもパスタも食べたい」 「じゃあ俺がパスタを頼むから、千紘はオムライスを頼めばいい。」 偉成が優しい。いや、いつもそうなんだけど、······なんか、カップルみたい。 「今のカップルみたいだったね」 「は?俺達は番なんだぞ?みたいじゃない」 「わかってるよ」 ムスッとした偉成にメニューを渡す。それを受け取ってパスタのページを開いた偉成は「どれが食べたいんだ?」とムスッとしたまま聞いてくる。 「偉成の好きなのでいいよ」 「千紘が食べたいんだろ?」 「パスタが食べたいなぁって思っただけ」 手を伸ばして少し尖ってる唇を摘む。摘まれたまま俺を見る偉成は不満そう。でもそれが本気じゃないのは偉成から香る匂いでわかる。 「ほら、拗ねたふりしないで笑ってよ。」 手を離してそう言うと偉成がふっと笑った。 「······匂いか」 「うん。甘い優しい匂いするよ。」 「そうか。どうしても千紘が好きだからな、なんでも許してしまう。」 「んふ、俺も!」 そんな会話をしてから、やっと店員さんを呼ぶ。注文をして、料理が来るまでバカップルみたいな会話を繰り広げていた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!