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第261話 悠介side
ああ、つまんない。
心からそう思う日々が続いてる。
休みの日だってすることは学校の課題くらいで、他には何も無い。
けれど、スマートフォンに届く母さんからのメッセージは休日なんて関係ない。
「早く番を作れって······わかってんだよ。」
スマートフォンをベッドに投げて、部屋を出る。
「うわっ!」
「え······」
勢いよく開けたら、そこには赤目君がいた。
どこかに行く予定なのか、ちゃんとした服を着てる。
「どっか行くの?」
「······優生と出かける」
「仲良いんだね。······もしかして契約したとか?」
「ああ」
即答されて目を見開く。
嘘でしょ。赤目君も番を作ったの······?
「信じられない。俺なんて良いオメガも見つからないのに」
「良いオメガって何だよ」
「俺のことを好いてくれそうな子」
そう言うと赤目君の目が冷めた色になっていくのがわかって、ジロっと睨みつける。
「あんたが相手の事を好きにならねえのに、相手からは愛情を貰うなんて無理な話だろ。」
「······うるさいな」
「でも事実。」
イラッとしたけど、それは図星を突かれたからだ。
「オメガ探してくる」
「はいはい」
1年生と2年生のオメガはもう全員知ってる。でも俺が惹かれる子は居なかった。
あとは3年生。
今日は休みだから無理でも、明日は学校だから3年生のオメガを見に行きたい。
今日は出会えたらいいなぁって思いながらオメガの寮近くにある庭の方にフラフラ出歩いてみよう。
早速そこまで歩いて、置いてあるベンチに寝転ぶ。
俺もだけど、俺の家族はアルファに拘りすぎてる。昔は俺もそんなに性別を気にしてなかったけど、高校生になると両親からの圧力でそう思うようになってしまった。
「──······あの」
正直俺だって、本当に惹かれた相手と恋愛をしたいんだ。
「あのっ!!」
「えっ?」
声を掛けられて体を起こす。
「生徒会の高良やろ?」
至近距離で俺を見るその人。可愛らしい顔をしてる。俺より小さな体。強く抱き締めたら折れそうなほど華奢だ。そしてその人の口から発される言葉のイントネーションは俺とは違っていて面白い。
「聞いてる?ここは基本的にオメガが休む場所。アルファのあんたの為の場所やないねんけど?」
「······名前は?」
「はぁ?······俺は楠本 旭陽 」
「旭陽······。何年生?」
「3年生。あんたより先輩。敬語使いな」
ふんっと鼻を鳴らして俺を見下ろす旭陽さん。
その体の華奢さと首にある首輪からオメガだろうなぁと思う。
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