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第265話
放課後になって生徒会から逃げて旭陽の所まで迎えに行った。
「旭陽!迎えに来た!」
「······来やんでええのに」
「何したい?俺は小腹すいたから何か食べに行きたいなって」
「それなら付き合う」
旭陽もお腹はすいてたみたいだ。街に出て適当にブラブラと歩く。
「あ······あれ」
「ん?どれ?」
旭陽が少し恥ずかしそうに1点を指差す。その指を辿るとそこにはクレープ屋さんがあった。
「クレープ食べたい」
「いいよ、何にする?」
「待って、メニュー見るから」
クレープ屋さんのメニューを睨むようにじっくりと見る旭陽。
「どっちの方が美味しいん?」
「さあ?美味しそうに見える方にしたら?」
「じゃあ······これ。これください」
店員さんに注文した旭陽は財布を出してお金を払おうとする。
「俺もこれください。お会計は一緒で」
「はっ?俺お前の買わんで」
「俺が買うの」
「それは悪いからいい。」
「甘えて」
旭陽に財布を片付けさせる。クレープを受け取って旭陽に渡すと、ムスッとしながらも少し嬉しそうにしている。
「俺、クレープ初めて食べる」
「え、そうなの?」
「うん。······俺の家親おらんくて、お婆ちゃんとお爺ちゃんと一緒に暮らしてきたから、あんまりこういうの食べたことない。」
「そう、なんだ?」
ベンチに座ってイチゴとバナナの入ったクリームたっぷりのクレープを食べる旭陽。
なんで両親がいないんだろう?まだ深い話は聞けない。そこまでの仲にはなれてない。
俺も手に持っていたクレープを食べて、この後はどうしようかなと考えを巡らせる。
「······──ありがとう」
「え?」
「クレープ、ありがとう。」
俯いて小さな声でそう言った旭陽。
クレープを強く握りすぎて少し形が変わってしまってる。
「いいよ、俺がしたかっただけだから。」
「······あっそ」
照れを隠すためか、旭陽はクレープに勢いよく齧り付いた。
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