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第269話
「何でおったん」
「生徒会室に行くついでに旭陽に会おうと思ってさ。」
保健室につくと直ぐに頬を冷やされた。
それから心配そうにずっと俺を見てくるから、気まずくて視線を逸らす。
「で?何で喧嘩になったの?」
「······別に」
「言わないなら、他の人に聞くよ?それで誤解が生じても旭陽は何も言えないけどいいの?」
「······嫌や」
俯いて首を左右に振る。
でも、あんまり言いたくない。オメガやからって理由は、俺自身もオメガっていう性を貶しているように思えるから。
「でも、聞かんといてほしい」
「······そんなに嫌なこと言われたの?」
頷いたら、その拍子にいつの間にか溜まっていた涙が零れた。
「旭陽、どうしたの?」
優しく抱きしめられる。高良の肩に額を付けて泣き続けた。
「辛かったね」
「············」
「我慢しないで思う存分泣いてね。」
「······俺やって、オメガなの嫌やのにっ」
「うん」
頭を撫でられる。
俺のこの悔しい気持ちが一生高良にはわからへん。そのことに対して高良にも腹立つのに、気持ちを抑えられない。
「悔しい······っ!」
「······うん」
俺もできることなら高望みはしやんから、せめてベータになりたかった。
「大丈夫、俺が守るからね。」
何から守ってくれるって言うんやろう。
もうこんなにも傷付いたのに。
「これから俺と一緒に住もっか。」
「えっ?」
泣き止んですぐ、高良にそう言われて思わず聞き返した。
「生徒会だから許されるんだよ。生徒会長の赤目偉成ってわかる?あいつも自分の番と一緒に暮らしてる。」
「······そうなん」
「ね?一緒に住もうよ。」
「············」
首を左右に振って拒否した。高良があからさまに嫌な顔をする。
「何で?」
「やって、1人の時間好きやし、俺寮長やし。」
「寮長なの!?」
「うん。やから無理」
嫌な顔をやめやん高良に俺も嫌な顔を返す。
「寮長やめたら一緒に過ごせる?」
「やめへんから安心して」
「······安心できないよ」
高良が俺に凭れて肩に顔を埋める。仕方なく頭を撫でてやると「やだやだ」と駄々をこねだした。
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