275 / 876
第275話
月曜日の朝。
俺が寝坊して偉成に軽く怒られながら部屋を出る。
「お前ええ加減にせえよ!俺をお前の遅刻に巻き込むな!!」
「怒らないでよ。大丈夫だって、ちゃんと教室まで送るから。」
「そんなん言うてないねん!」
廊下で大きな声が響いてる。
高良先輩の声が聞こえてそっちを見ると、眠そうに部屋の鍵を閉める高良先輩と、見たことのある人がそこに居た。
「寮長?」
「あ?」
くるっと俺を振り返ったその人。
やっぱり、オメガの寮を纏めていた寮長だ。話したことは無いけど、何度か見かけたことがある。
あれ、高良先輩と一緒にいる?
朝から、何で?
考えて行き着いた答えに、俺は嬉しくなって、文句を言ってる偉成を放って2人に駆け寄った。
「高良先輩の恋人!?」
「あ、千紘ちゃんおはよぉ。」
高良先輩が俺を見てへにゃぁと表情を崩す。眠いって全面で伝えてくるあたり、高良先輩らしい。
「あの、俺、松舞千紘です!寮長ですよね!」
「あ······うん。今はちゃうけど······。」
「高良先輩と番になったんですか?」
ストレートに聞くと、寮長の顔が真っ赤になった。それを見て高良先輩が笑う。
「千紘ちゃん、ごめんね。旭陽は恥ずかしがり屋だからさ」
「誰がっ!!」
「それより会長が後ろで怒ってるけどいいの?」
「え······」
振り返ると、貼り付けたような笑顔で俺を見る偉成がいた。
「遅刻するって、言ってるよな、千紘。」
「······許して?」
「走るぞ!」
「えぇっ!!」
偉成に手を掴まれて廊下を走る。
そんな俺たちの後ろで「俺らも行くで!」と寮長の声が聞こえた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!