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第278話 旭陽side

千紘と別れて部屋のソファーに倒れ込んだ。 悠介はまだ帰ってこやんはず。朝生徒会があるって言うとった。 千紘は幸せ者やなって思う。 運命の番とか、ほんまにあるんや。俺もそうやって自然と惹かれ合う恋愛がしたかった。 しかも惹かれた相手が赤目偉成。この学校の中で、1番力のある生徒。 まあ、言うて俺の恋人をしてる高良悠介も力を持ってるけど。 俺の家はお爺ちゃんとお婆ちゃんしかおらんから、将来は楽をさせてあげたくて、この学校に通って良いアルファを見つける為に必死に勉強して特待生で入学した。 莫大な学費を払わずに済んで、2年と数ヶ月通い続けてやっと捕まえたアルファ。 何で悠介と付き合ったかなんて、結局は俺の為でしかない。ただ悠介が俺の遊びに付き合ってくれてるだけ。 でも、ほんまに番にならんと、俺の計画は上手くいかんわけで。 「ただいまぁ」 悠介の声がして慌ててソファーから起き上がった。 立ち上がって時計を見れば帰ってきてから1時間が経っていて、どんだけぼんやりしてたんや。 「······おかえり」 「あー!いいねぇ。おかえりって言ってもらえるの幸せ。旭陽ぃ」 「うわっ!ちょっと、うざい!離れて!」 「やだやだ」 抱きしめられて身動きが取れなくなる。体重掛けてくるから重たいし、正直言って鬱陶しい。 悠介の黒い髪が頬や首を擽る。 「なあほんま、疲れてるなら余計に。はよ離れて風呂でも入れば?」 「疲れてるから旭陽で癒されてるんだよ。」 「癒すも何も無いやろ。男に抱きついて癒されんのか?」 「俺が大切に思う子限定ね。」 顔を上げた悠介が整った顔でじっと俺を見る。 恥ずかしくなって視線を逸らすと、それを許してくれん悠介が俺の頬をガッと掴んで強引にキスをしてくる。 「んっ!んんっ!」 「俺の事ちゃんと見て」 「ぁ、は······ちょ、んっ、んぅ······は、はなさ、れへん······っ!」 「話さなくていいから、見て。」 真剣に言われたら拒否できひん。 生理的な涙がじんわり浮かんで、若干滲む視界で悠介を見ながら、唇に与えられる熱を受け入れる。 「はぁ······んっ······」 「ん······」 唇が離れるといつの間にか腰が抜けたみたいで、悠介に凭れかかる。 銀色の頼りない糸が俺達を繋いで、それを悠介が俺の唇を舐めて切った。 「大丈夫?」 「はぁ······ぁ、俺、キス、苦手······」 「苦手?」 「息すんの、難しい······」 翻弄されるだけ。深いキスをした時はいつも力が抜けてまう。

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