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第285話 悠介side
1週間が経って、旭陽の発情期も落ち着いた。
今は疲れ切ってベッドで深く眠っている旭陽の体を、タオルで拭いてあげる。
一通り拭いて、片付けをした後、冷蔵庫を覗くと何もなくて、旭陽が起きた時に何かを作れるように買い物に行くことにした。
部屋を出ると、たまたまどこかに行く予定だったのか千紘ちゃんが廊下を歩いている。
「千紘ちゃん」
「あ、高良先輩」
「何してんの?」
話しかけると千紘ちゃんが露骨に嫌な顔をした。
「旭陽先輩、発情期だったでしょ。」
「え?あ、うん。何かあった?」
「すぐ薬打たないからフェロモンだだ漏れで、アルファの人達が困ってた。」
「あらあら。でも番になろうって言ってたからさ」
「薬打っても発情期が無くなるわけじゃないから大丈夫なのに。」
そう言われて薄く笑う。
そんなこと、俺だってわかってる。
「噛まれるのは痛いよ。少しでも痛くないようにしてあげないと」
「······高良先輩の優しさはわかりにくい」
「そうかなぁ?千紘ちゃんが鈍感なだけだと思うよ」
笑って返すとムッとした千紘ちゃんに、子供だなぁと思う。
「千紘、早く入れ。」
「あ······」
会長の部屋のドアが開いて、そこから会長が顔を覗かせる。
「高良先輩と話してたの」
「そうか。」
「あ、旭陽先輩に謝らないと!」
「旭陽に?何を?」
俺の知らない間に旭陽と喧嘩でもしたのだろうか。
聞けば千紘ちゃんは首を左右に振る。
「旭陽先輩は?」
「寝てるよ。多分明日も動けないだろうから休ませる。」
「明日ちょっとだけ会わせて下さい。謝りたい」
「あー······わかった。伝えとくね」
なんの事か気になるけど、まあいいや。
とにかく俺は早く買い物に行こうと「じゃあね」と言って千紘ちゃんの横を通り過ぎた。
何か栄養のあるものを食べさせてあげないと。
旭陽は小さいし、体力もあまり無い。発情期で疲れきって、そのせいで明日体調を崩さなければいいんだけど。
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