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第286話
早く買い物を終えて帰ってきた。
荷物を置いて旭陽の様子を見に行く。
寝室に行くと、布団がやけに膨らんで丸く小さくなっている。
そこを撫でながら声をかけた。
「旭陽······?」
「っ!」
ビクッと震えて、布団から顔を出した旭陽。
なぜだか泣いている。
「どうしたの?どこか痛い?」
「······ちがう」
旭陽の手が伸びてきて、俺の腰に回される。
抗うこと無く引かれたまま旭陽の腕の中に沈む。
「行かんとって」
「ん?」
俺も旭陽の背中に手を回して抱き締める。
子供体温なのか、旭陽は温かい。
「起きたら、おらんくて······ビックリした。」
「買い物に行ってたんだよ」
「······もうしやんとって」
「甘えたいの?」
まだ微睡みの中に居る旭陽。撫でてあげると目を閉じて眠りそうになっている。
「······ちがう、もん」
「いいよ、旭陽が起きるまで傍に居るよ。」
「······うん」
目を閉じた旭陽の髪を撫でる。
本当、旭陽は素直じゃない。
そんな所も可愛いんだけど。
番になった今、旭陽に聞きたいことは山ほどある。
本当は今すぐにでも聞き出したいところだけど、可愛い寝顔を見せられたら、起こすなんてできない。
「······ゆうすけ」
「何?」
小さな声で呟くように俺の名前を呼ぶ。
それが、どうしてかすごく切なくて、切なさが心臓を撫でる。
「ごめんね」
「······何が?謝られるようなことされてないよ。」
「······ごめん。」
俺には旭陽が何を考えているのかがわからない。
旭陽の額にかかる髪を退けて、唇に俺の唇を合わせる。
ああ、なんでだ。
こんなにも胸が苦しい。
「おやすみ、旭陽。」
「ん······」
旭陽の涙がうつってしまいそう。
泣きたくなんてないのに。
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