287 / 876

第287話

*** 旭陽が目を覚まし、すぐにご飯を作ってあげた。 「体だるい」 「そりゃあ1週間セックスしっぱなしだったからね」 「······言わんといて。恥ずかしい」 「あはは、可愛かったよ。」 ご飯を食べながらそんな会話をする。まるでさっき話したことなんて無かったかのように。 「そう言えば千紘ちゃんが旭陽に謝りたいって言ってたよ。明日謝りに来るって」 「え?······何をやろ。別に何もされてないけど」 「さあ?教えてくれなかったし」 ふーん、とあまり興味ないと言うような返事をされて思わず笑う。 いやでも、そんな俺にとってどうでもいいことを話したいんじゃない。 「旭陽」 「何?」 「旭陽に聞きたいことが沢山あるんだけど、いい?」 「ご飯食べ終わったらね。でも聞きたいことって何?そんなにあるん?」 不思議そうな旭陽に向かって頷いた。 「あ、ブロッコリー食べなさい。」 「やってブロッコリー嫌いやもん」 「ダメだよ」 「なら悠介が食べて。ほら、あーん。」 ぐっと体が固まった。 あーんしてくれるのは嬉しい。番からそうしてもらうのは、喜ばしいことなんだけど、野菜は食べて欲しい。 「ほら、いらんの?勿体ないやろ?」 「ぐっ······」 「あーん」 欲に負けて口を開けた。 フォークに刺さったそれが口に入れられてゆっくり噛む。 「美味しい?」 「······美味しい」 複雑な気持ち。旭陽はへらりと笑っている。 いつもよりゆっくりと食事をして、食器を洗う。 ソファーに座ってダラダラしてる旭陽の傍に寄って「ねえ」と声を掛けると視線が俺を向いた。 「何?」 「さっき言ってた聞きたいこと、聞いていい?」 「ああ、言うとったな。ええよ、何?」 まず、何から聞こう。 俺が1番不思議に思っていたのは家族の事。そして何でこの学校に来たのか。 「······好きな食べ物は」 「は?」 「教えて」 でもいきなり重たい質問をできるわけがなくて、ついつい逃げてしまう。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!