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第289話 千紘side

*** 「ごめんなさい!」 朝、学校に行くために部屋を出ると旭陽先輩を見つけて、直ぐに頭を下げた。 「あの、俺別に何もされてないけど。」 困惑した様子でそう言う旭陽先輩だけど、確かにあの時暗い顔をしてた。 「だって······暗い顔してたから」 「暗い顔?覚えてないや。とにかく気にしやんといて」 困ったように笑う旭陽先輩。俺は頭を上げて「でも······」と言うと、旭陽先輩の後ろから現れた高良先輩が「千紘ちゃん」と俺の肩を叩く。 「気にしちゃ負けだよ。旭陽は何の事だかもわかってないんだから。」 「おい、その言い方やと俺がアホみたいやんけ」 高良先輩と軽く言い合う旭陽先輩。 2人は仲良しに見えて、それに酷く安心する。 俺が高良先輩を裏切るようなことをして傷つけたから、旭陽先輩にその傷を癒してあげて欲しいと思った。······自分勝手だけど。 「千紘、行くぞ。」 「うん!」 偉成に声を掛けられて、手を繋いで学校まで向かう。 「旭陽、俺達も手繋がない?」 「しない」 「何で?ラブラブに見えるじゃん」 「ラブラブちゃうもん」 後ろから小さく聞こえてくる会話が面白くてクスッと笑う。 「千紘?どうした?」 「ううん、高良先輩と旭陽先輩の会話が面白くて」 「あの2人は仲が良いな」 「俺達だって負けてないと思うけど?」 そう言って偉成を見上げると、小さく笑った偉成にキスをされた。 「あ······ちょっと······」 「何だ?」 「すぐそこに高良先輩も旭陽先輩もいるのに······」 「いいだろう。2人だってしてることだ」 そういう問題じゃないと思うけど。 偉成はたまに変なことを言うから面白い。

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