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第290話

学校に着いて偉成と別れ、席に着く。 「おはよう、千紘君!」 「優生君、おはよう!」 声を掛けてくれた優生君。 ······あれ、今日は首輪をしていない。 「首輪は?」 「あ······えっと、そろそろ外さないと匡君が寂しいかなって思って。」 「俺が何?」 欠伸をしながら寄ってきた匡。 優生君の首を見て満足そうに微笑む。 「首輪の話か?」 「うん。優生君が取ってくれて嬉しいの?」 「嬉しい。これで優生が他のアルファにエロい目で見られる事も少なくなる。」 「······匡のお兄さんは首輪を着けてるのは良いって言ってたけどね」 「お前の恋人は残念ながら少し頭がおかしいんだ。」 お互いそう言い合ってクスクスと笑う。 「ねえ来月テストだよ。どうする?」 「どうするも何も勉強するしかねえだろ。」 至極真っ当な言葉が返ってきて項垂れる。 テストなんて嫌だ······何とか成績は中の上を保っているけれど。 「どうしよう······勉強やだよぉ」 「僕も嫌だなぁ。あ、またテスト前に勉強会しようね。」 「うん、する。優生君と匡から教えてもらう。」 「お前いつも途中で飽きたっつって他のこと考えてるだろ。」 匡がそう言うから、思わずジトっと睨みつけた。 一瞬戸惑った匡だけど、直ぐに強気な表情に戻る。 「本当の事だろ。」 「今回は真面目にするよ!」 「2人共喧嘩しないでね」 優生君に「助けて」と言って抱き着くと、すぐに匡に引き剥がされた。 「ちょっと!」 「それは俺の台詞だ。ベタベタするな」 「ムカつく!」 そんな時、チャイムがなって、麻倉先生がやって来た。 珍しいことに時間ぴったりだ。 教室が逆にざわざわとうるさくなった。

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