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第291話
***
「お、終わった······」
12月に入りずっと不安だったテストが終わった。
テスト前に優生君と匡と、偉成から勉強を教えて貰ってなんとか出来た。
「千紘、帰んのか?外行って遊びに行かねえ?」
「行かない······。帰って偉成に甘えたい」
「本当千紘君は会長が好きだね」
その言葉に頷いて、荷物を持ち教室を飛び出す。
偉成はもしかしたらまだ帰ってないかもしれないけど、それでもあの部屋は偉成の匂いがするし、落ち着くから急いで寮に向かう。
寮について部屋に入ると案の定、偉成はいなかった。
バッグを投げてソファーに倒れ込む。
「終わり、終わった······テスト終わった······」
呪文みたいにブツブツと呟いていると、「千紘?いるのか?」と偉成の声が聞こえてきた。
「鍵開けっ放しだったぞ。」
「んー」
「千紘?」
手をブラブラと揺らして偉成を呼ぶ。
傍に来てくれた偉成の腕を引くと、抗うこと無く俺の上に覆いかぶさった。
「疲れた」
「お疲れ様」
頭を撫でられて、そのままキスされる。
俺も同じように偉成にキスをして「偉成も」と伝えた。
「もう少ししたら休みだし、部屋の片付けをしないとな。」
「······楽しくない」
「初詣は一緒に行こう。千紘も実家に帰るだろ?」
「その予定だけど······」
腕を引っ張られて起こされる。
もう年末かぁ。なんだか寂しい気持ちになるな。
「うちに来るか?」
「うん、挨拶しないとね。」
「俺も千紘の家に行く。」
「お母さん達に伝えとくよ」
そう話をして、ハッと思い出す。
「匡は?実家に帰るのかな」
「······帰ってこないと思う。小鹿も実家に帰れないんだろう?なら匡の家に行くだろう。」
「そっか」
匡が頑なに家族を拒む理由は俺にはわからないけれど、そこまでさせる何かがあったんだろう。
優生君は知ってるのかな。
俺は知りたいけど、まだそこまで踏み込めない。
「とりあえず掃除だな」
「やだぁ!」
「やだじゃない。年末にはやることがいっぱいあるんだぞ」
偉成が小さく微笑んで言う。
俺は全く笑えなくて、もう一度ソファーに沈んだ。
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