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第299話
翌日、朝から部屋の掃除をして働きまくった。
普段はこんなに動かんから、明日は筋肉痛になると思う。
「お疲れ様。お菓子食べましょう」
「······眠たい」
床に倒れるとお婆ちゃんが笑って傍にやってくる。
「綺麗にしてくれてありがとうね。そうだ、旭陽。近所のお友達に会ってきたら?みんな仲良かったでしょ?」
「え······でも、今はそんなに仲良くないよ······。連絡も取ってないし」
「会ってしまえば関係ないわよ」
お菓子を食べたら行っておいで、と言われて仕方なく頷いた。
スマートフォンを取り出して、近所に住む友達······いや、知り合いに会えるか連絡を入れてみる。
「······会えるんかい」
すぐに返事が来て、望んでない方の応えにちょっと肩を落とす。
自分から連絡していて何だって感じだけど。
「じゃあ、会ってくる」
「ええ、行ってらっしゃい!」
面倒くさくて仕方ない。
それでもお婆ちゃんが言うことに逆らう気はなくて、分厚い上着をきて外に出た。
正直寒いし、このままUターンして帰りたい。
でも、気になることもあったから、そのまま足を進める。
近所に住んでる知り合いで1人、同じオメガの子が居る。
その子も一緒に白樺学園を受験したけど、落ちてしまった。一緒に合否発表を見て悔しそうにしてたのを今でも覚えてる。
「旭陽ー!」
「タク!」
家の近くまで行けばその人が立っていた。
遠野 匠海 。俺はタクって呼んでるその人。
「元気してた?」
「うん。タクは?」
他愛のない話をして、会わなかった時間を埋めていく。
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