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第300話

「もうすぐ高校卒業やろ?進路決まったん?」 「あー······それが、なかなか。オメガだからさ」 やっぱり、この世界はオメガに対して厳しすぎる。 「旭陽は?白樺行って、どう?」 「······実は、最近番が出来た。」 「えっ!?」 タクが俺を凝視する。 それから、首を指さした。 「首輪、ない······」 「うん。契約したから、もう必要なくて。」 「契約······すごいね、羨ましい。じゃあ······就職先が見つかったってことだよね。」 タクの言葉に頷いた。 タクは少し戸惑いながら、俺の手を取る。 「おめでとう。」 「あ······ありがとう」 「これからは気をつけないとダメだよ。番以外に襲われたら体が拒絶して酷いことになるって言うし。番がいてフェロモンは他の人に対しては出ないって言っても、体格でオメガっていうことはわかるから。」 真剣に心配してくれるタク。 知り合いなんて言うてしまったことを後悔する。 「何かあったら相談しろよ!俺達、友達だから。」 「ありがとう」 なんか、擽ったい感じがする。 タクの顔を見て、小さく笑った。 「ところで相手は誰?アルファだから、どうせ大金持ちなんでしょ?」 「あー······多分、有名な会社の所の息子やから知ってると思う。高良悠介って言うねん」 「えっ、高良?さすがの俺でも知ってるよ······」 やっぱり、あいつの会社は有名やからみんな知ってるか。苦笑を零すと、タクも同じように笑う。 「あんまりオメガの子に言わない方がいいね。羨ましくて、旭陽を傷付けに来るかも。」 「さすがにそんなことしやんやろ。」 「わからないよ」 タクがふふっと笑う。 背中がゾワゾワした。 「久しぶりに会えてよかった。また帰ってきたときは連絡して。今度は一緒にご飯食べに行こう」 「うん、また。」 家の方に足を向ける。 さっき背中に感じたゾワゾワは寒かっただけやと思うことにして、帰路についた。

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