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第301話

家に着いてから、気になって悠介に電話することにした。 俺から連絡するのなんて初めてやから、悠介は「旭陽っ?」と興奮した様子で電話に出た。 「悠介?今大丈夫?」 「大丈夫!どうしたの?旭陽からの電話なんて初めてだから嬉しい!」 「あー······元気そうでよかった。」 昨日暗い声してたから心配しとったのに。 「旭陽がいなくて寂しいよ。早く会いたい。冬休みなんていらないよ」 「······お、俺は別に、うざったいお前がおらんから楽やけど!」 素直な気持ちが言葉にできない。 本当は会いたいって言ってくれたこと、嬉しかったのに。 「まーたそんなこと言ってぇ。本当は会いたいくせに。素直じゃないんだから」 「ばっ······バカッ!そんなんとちゃう!」 顔が熱くなる。 別に、ほんまに会いたいとは思ってないっ! 「明日で今年が終わるね。」 「そう、やね······」 「今年は色々あったから、来年は旭陽と楽しい日々を過ごしたいな。」 「······でも俺は卒業するよ。やから、2月いっぱいまでやね。」 言葉にすると実感する。 あと2ヶ月しかないんやって。 「俺が卒業するまでは旭陽は旭陽の家で暮らすんだよ。毎週休みには会いに行くからね。」 「そんなんせんでいい。別に、1年くらい余裕で待てるし。」 「発情期があるでしょ?」 「抑制剤あるからええの。」 「よくないでしょ」 ふいに部屋に置いてあった鏡が目に入った。 そこに映る自分が、笑ってることに気づいて顔を引き締める。 「旭陽?」 「え?うん、何?」 「だから、よくないでしょって。」 引き締めたはずやのに、次の瞬間には緩まってる。 ああ、くそ。 悠介と話してるからや。 滲み出る楽しいっていうのが表情に出てしまう。 「いいの、大丈夫やから。」 「もう!俺が大丈夫じゃないんだってば」 悠介の言葉にクスッと笑う。 俺を必要としてくれてるのがわかる言葉に、優しい口調。 「うるさいな。もう切るよ」 「あー!待って!」 「······何?」 ほんまは待ってっていう言葉を無視して切ろうと思ったけど、悠介の言葉を待ってあげる。 「好きだよ、旭陽。」 「っ!う、うるさい!バカ!」 今度こそ通話を切って、胸がバクバクとうるさく鳴るのを深呼吸をして落ち着かせた。

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