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第302話

*** 年が明けた。 またもう少しで学校やけど、今までは思ったこと無かったのに学校に戻ることが楽しみになってる。これも悠介のおかげなのかもしれない。 スマートフォンが細かく震える。取り出して画面を見ると悠介から「あけましておめでとう」とメッセージが来ていた。 俺も同じように返事をした。 すると間もなく、またスマートフォンが震えて、でも今度は悠介からのメッセージじゃなかった。 「タク······?」 内容は一緒に初詣に行かないかってこと。 初詣はお婆ちゃんと一緒に行くつもりやから、申し訳ないけど断った。 すると、俺が学校に帰るまでに1度会いたいって言われて、それはいいよって応えた。 「旭陽、初詣行きましょう」 「うん」 厚めのダウンを着てお婆ちゃんと一緒に家を出る。 近くの神社に来たけど、人がいっぱい。 礼拝をして、お守りを買って、あまりの人の多さに早々に神社を出る。 「はいこれ、お婆ちゃんのお守り。」 「ありがとうね」 帰り道でお守りを渡して、家に着くとお婆ちゃんの作ったお節とお雑煮を食べた。 「お昼からはお爺ちゃんの所に行くからね。」 「うん」 空になった食器を片付けて、お昼まで時間を潰す。 お爺ちゃんの所に行くよってお婆ちゃんに言われて、立ち上がりまた厚いダウンを着た。 「あけましておめでとうございます」 お爺ちゃんに向かいそう言うと、お爺ちゃんも同じ言葉を返してくれる。 それからクイクイっと手招きされて、傍に寄るとお爺ちゃんがニコニコしながらお年玉をくれた。 「あ、ありがとうございます」 お爺ちゃんは相変わらずのほほんと笑っていて、俺も笑ってみせると頭を優しく撫でられた。 「旭陽は恋人も見つかって、4月には家を出ていくのか?」 「ううん、その人が1つ年下やから、卒業するまで家で待ってる。」 「そうかそうか。お爺ちゃんも早く家に帰りたいなあ」 冬休みの間は無理でも、次帰ってくる時にはもう家におるはず。 その時はお爺ちゃんに沢山付き合ってあげようって思う。 お爺ちゃんの趣味の囲碁とか、将棋とかのルールは正直今はわからんけど、ちゃんと勉強しておこう。 「じゃあ帰るわね。旭陽、行くわよ。」 「うん。お爺ちゃん、またね。」 「ああ。気をつけてな」 病室を出て、今日やることはこれで終わりや、と肩から力を抜いた。

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