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第305話 悠介side
年が明けて、今日が休みの最終日。
旭陽も今日寮に帰ってくる予定で、久しぶりの旭陽を楽しみにして、俺は寮に戻ってきた。
それなのに、夜になっても旭陽は帰って来ない。どうしたんだろうと、不安になってメッセージを送ってみたけど、返事も来ない。
「······お爺さんが倒れたって言ってたけど、何かあったのかな。」
それなら俺は邪魔しちゃいけないと思って、スマートフォンを置き、荷物を片付けた。
翌日、学校が始まったのに、やっぱり旭陽は来ない。
教室まで見に行って、ついでに見回りをしてたけどその姿は見られなかった。
「············」
何があったんだろう。
心臓がゾワゾワする。
「──······なあ知ってる?楠本の話」
旭陽のクラスの近くを歩いていたら、旭陽の話題を出している奴がいて、足を止める。
「俺の知り合いのオメガが楠本の友達らしいんだけどさ、楠本がそのオメガに嵌められて、レイプされたらしいんだよ。今入院してるって」
「入院?何で?」
「あいつ2年の高良と番になったらしいじゃん。番を持ってるオメガが、他の人間にヤられたら、体にすげえ負担が掛かるんだって。その······楠本を嵌めたオメガが言って······た······」
話をしていた男の語尾が崩れる。
俺を見て、顔面を蒼白させている。
「ねえ、旭陽は今どこにいるの?」
話し掛けると、男は膝から崩れて廊下に座り込む。
「ま、待ってくれ、俺は関係ないっ!」
「旭陽はどこ?その友達のオメガの事も教えてよ」
「ひっ!だ、誰か、助け······っ!」
男の胸倉を掴んで顔を寄せる。
にっこりと笑ってみせた。
「早く教えろ。」
男は壊れたロボットみたいに、何度も首を上下に振った。
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