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第306話
学校なんか構ってられなくて、急いで旭陽の家を調べた。
泣きたくなるのを堪えて、見つけたその場所まで向かう。
2時間かけて着いたそこ。地図を見て旭陽の家まで歩いていくと、そこには1人のお婆さんがいた。
「こんにちは」
「あら、こんにちは」
お婆さんは穏やかな顔で俺を見る。
「あの、ここは······楠本旭陽君のお家で間違いないですか?」
「ええ。でもごめんなさい、旭陽は今居なくて······」
「俺、旭陽君の恋人なんです。旭陽君に会わせて下さい。」
そう言って頭を下げる。
お婆さんは息を飲んで、それから「いいわよ」と言って俺の肩を叩いた。
「旭陽は今入院してるの。酷い目に遭ってね。私もちょうど病院にお見舞いに行くところだから、一緒に行きましょう。」
「はい。ありがとうございます」
お婆さんが、ちょっと待っててね、と言って家の中に入っていく。
それを目で追いかけて、見えなくなってからしゃがみこんだ。
「旭陽······」
冬休み、俺は自分のことで精一杯だった。
もっと旭陽と連絡をとりあえばよかった。旭陽に会いに来ればよかった。
「行きましょう」
お婆さんが出てきて、俺を見て微笑む。
立ち上がって、しばらく道を歩き、大通りに出てタクシーを拾った。
「旭陽は強がりだから、私の前では平気って言うの。」
お婆さんが旭陽の話をしてくれる。その声は穏やかだ。
「でもね、平気じゃないって事は誰にだって分かると思う。酷く体調を崩して、今はほとんど眠れてないらしくてね。」
突っ伏して泣きたくなる。
そんなになってるのに、お婆さん達に心配をかけまいとしている。その状況を聞くだけで哀しくなる。
「だから、貴方が話を聞いてあげて。もし拒絶されても、怒らずに、見捨てずに、旭陽を守ってあげてほしいの。」
「はい。わかってます。」
酷く傷ついている旭陽に、なんて声をかければいいのかわからない。
「着いたわ」
心臓が嫌な音を立てる。
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