308 / 876

第308話

旭陽が少し落ち着いて、俺をぼんやりと見る。 泣いたから、目元が赤い。後で冷やしてあげないと。 「悠介」 「何?」 今にも壊れてしまいそうな程脆くなっている旭陽。手を取ってぎゅっと握ると、また泣きそうな顔になる。 「悠介······俺、悠介じゃない人達に、抱かれちゃった。」 「······うん。辛かったね」 「めっちゃ、痛かってん。やめてって言うても、やめてくれへんし······そ、れに······」 「旭陽が辛くなることは言わなくていいよ。」 そう言うと俯いた旭陽が、「抱き締めて」って小さく呟いたから、そっと震える体を抱きしめた。 「中で······出されてん······。妊娠する確率はほぼ無いって······。でも、気持ち悪くて、嫌や······」 「············」 「ぜ、んぶ······初めては、悠介がよかった······」 傷ついてる旭陽に、なんて言葉をかければいいんだろう。 「······ごめんね。もっと、気をつけてたらよかった。」 「あ、やまらないで······」 「ごめん、悠介······」 旭陽の涙が俺に移る。 頬を伝うそれと、口から漏れる嗚咽。 俺が支えてあげないといけないのに、泣いちゃダメだとわかっているのに。 「悠介、俺、ちょっと眠たい」 「うん。ずっと傍にいるから、安心して眠って。」 「ありがとう」 涙を拭いて、旭陽の体をそっとベッドに寝かせた。 「おやすみ、旭陽」 「うん。おやすみ、悠介」 手は繋いだまま、旭陽が目を閉じる。 そのまま、嫌な記憶を忘れて欲しい。 暫くすると小さな寝息が聞こえてきた。どうやらちゃんと眠れたらしい。 旭陽の顔を覗けば、穏やかな表情をしていた。 点滴が無くなる頃に看護師さんがやって来て、旭陽が眠れてるのを見て「よかったです」と言って点滴を取っていく。 それが終わる頃にお婆さんが戻ってきた。 「あら、旭陽は眠ったの?」 「はい」 深く眠れている。 もしかして俺が来る前に、何か薬を処方されていたのかもしれない。 「薬、飲んだんですかね。急に眠たいって」 「······貴方が来て安心したんじゃないかしら。」 お婆さんがそう言って旭陽の頬を撫でる。 もしお婆さんの言葉が本当なら、暫くはずっと旭陽の傍に居ることにしよう。 旭陽が安心できる場所を、俺が作ってあげないと。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!