310 / 876

第310話

2日後、俺は退院して悠介と一緒に寮に戻ってきた。 短かった冬休みが、めっちゃ長かったように感じる。 「旭陽、桃のジュース飲む?」 「あ、うん。飲みたい」 悠介がジュースを入れてくれて、それを呑んでホッと一息つく。 「荷物解かないとね。旭陽は休んでる?」 「ううん、自分でやる。」 「そう?じゃあ一緒にやろっか」 「うん」 洗濯はしてきたし、服は元あった場所に戻すだけ。 バッグを寝室まで持って行ってクローゼットを開ける。 「っ!」 クローゼットを開けると、掛けたままの制服が目に入った。 そして、ハンガーに引っ掛けられてあるネクタイを見た途端、体が大袈裟に震えて立ってられなくなった。 「旭陽?」 「っ、あ、あれ、あれ嫌っ!!」 襲われた時に見えていた物を鮮明に思い出させる。 あれで視界を塞がれて、酷く怖い思いをした。 呼吸が荒くなって、胸が苦しい。 助けてほしくて悠介の服を掴む。 悠介が急いでクローゼットを閉めた。ぎゅっと強く抱きしめられて、背中をさすられる。 「もう閉めたから大丈夫だよ。」 「はぁ、はぁっ······ぁ、苦し······っ」 「旭陽」 吸っても吐いても苦しい。 上手く呼吸ができない。 「旭陽、ちょっと我慢してね」 悠介がそう言って、俺の顔を上げさせる。 そのまま、唇を悠介の唇で塞がれた。 「んっ、んぅ······は、ぁっ······ゆ、すけ······」 口内に入ってくる舌に蹂躙される。 悠介の服を掴んで、それを受けていると、次第に呼吸は落ち着いた。 唇が離れて、口の端から唾液が零れる。 「いい子」 「······っ」 その唾液を舐めとった悠介が俺の顔を胸に押し付ける。 「何が嫌だった?」 「······ネクタイ」 「そう」 悠介にもたれかかって、未だ微かに震える体を落ち着かせる。 「あ、あれで、目、塞がれて······」 そう言うと悠介の手に入る力が強くなった。 「服は俺が片付けておくから、旭陽はリビングで休んでおいて。帰ってきたばかりで疲れたでしょ。眠っていていいからね」 優しく微笑んだ悠介に、お姫様抱っこされてリビングのソファーまで運ばれる。 「ちょっと待っててね。」 額にキスされて、悠介が離れていった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!