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第320話 偉成side

眠る千紘に何度もキスをして、可愛い顔を眺める。 長い睫毛に小さい鼻、ぷっくらした唇。 ああ、可愛い。 「······罪だな」 この可愛さは最早犯罪だ。 今回の発情期も俺が自制出来なくて千紘はきっと、どっぷりと疲れただろう。 これじゃあきっと、明日も休むことになるな。 まあ、それはいいとして。 あと2ヶ月で3年生が卒業する。 つまり、そろそろ生徒会での準備が必要になってくる。 「はぁ······」 また忙しい日々が始まると思うと憂鬱だ。 「んー······偉成······重たい······」 「ごめん」 薄く目を開けた千紘に怒られて、そっと体を離す。 千紘の頬を撫でて、もう1度だけキスをして俺も眠ろうと目を閉じる。 明日は休んで、1日千紘のお世話をしよう。 きっと腰が痛いと言うからマッサージしてやるんだ。 そうして眠った次の日、千紘に体を揺すられて目を覚ます。 「偉成の馬鹿!腰が立たないじゃんかっ!」 「あはは、それは毎度のことだろう」 笑って千紘を抱きしめると、肩をバシバシ叩かれる。 「もう少しだけ寝かせてくれ。起きたらすぐに朝ご飯作るから」 「······コーンスープ飲みたい」 「ああ。わかった」 千紘の髪に顔を埋める。 いつもの優しい匂い。 「あ、お風呂入りたい······」 「うん」 「連れてって」 「後でな」 朝のゆっくりとした穏やかな時間が好きだ。 千紘はそれ以上話すことはなくて、俺の背中に手を回して抱き着いてくる。 そしてそのまま、少しの間また眠る。 唇に触れた柔いそれを感じて。

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