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第322話
「最近ずっと休んでいるだろ。」
「そっちもでしょ?千紘ちゃんの発情期?」
「そうだ。明日からはちゃんと行く。お前は?」
「あー······今は行けないんだよね。」
切なそうにそう言う高良。いつもの様子と全く違う。
「何があった?」
そう聞くと、高良が歩みを止めて俺をじっと見る。
「旭陽が襲われたんだ。」
「······なるほどな」
悔しそうな表情は、いつもの高良からは想像出来ないほど歪んでいる。
「主犯は旭陽の友達だったはずのオメガ。その子が知り合いのベータ達に声を掛けて、大勢で旭陽を襲わせた。」
「············」
「おかげで旭陽の精神面はボロボロだよ。夜は魘されて、ご飯もあんまり食べれないし、1人になるのは嫌だからって、最近はずっとくっついてる。今も何とか無理言って出てきたんだ。」
知らない間に悲しい事件が起きていた。
また歩いて、寮の近くにあるスーパーに着いた。
「旭陽、3年だからもう少しで高校生活も終わるのにさ、今楽しめないんだよ。」
「······それは辛いな」
「どうしてあげたらいいのかもわからない。会長ならどうする?」
「······助けてはやれないけど、支えることは出来るから、そうして行くしかないと思う。」
実際にその状況になったわけじゃないから、なんとも言えない。
「襲った奴らはどうした」
「今はそれどころじゃなくて。」
「なら代わりに動いておこう。主犯の名前を教えろ」
俺には解決策はわからないけれど、少しくらい助けてやれるはずだ。
「ありがとう」
「いい。それに買い物も言ってくれれば俺が行く。なるべくそばに居てやれ」
そう言うと高良は驚いたように目を見開いた。
「俺、会長と千紘ちゃんに酷いことしたのに······」
「別にいい。全部過去の事だ。」
「······本当にありがとう。」
「お前にそんなに礼を言われると変な気分だな。いつもみたいにヘラヘラしてろ。お前の番も不安がるぞ」
笑って冗談のように言ってやる。
すると高良はふっと笑って、それからはいつも通り、俺の知ってる高良で買い物を続けた。
「あ、ねえ、鍋ってどうやって作るの?」
「······野菜を切って鍋に入れるだけだ」
「へえ!締めは?うどん?」
「何鍋にするんだ?」
高良の様子を見ていたら、高良は兎も角、番相手が健康的な食事を取れてないんじゃないかと不安になった。
「······俺が作って持って行ってやる。お前に料理は出来ないと見た」
「えー!酷い!俺だってちょっとくらいは······」
「お前の番の為だ。」
こういう時こそちゃんとした物を食べさてやらないと。
早々に買い物を済ませ、寮までも少し早足で戻った。
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