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第323話

寮に戻り、急いで俺と千紘の分の料理を作った。 「千紘、ちょっと高良の所に行ってくる」 「え、何で?」 「今日は俺の手料理を振る舞う日だ」 「そう。行ってらっしゃい」 そこまで興味を持っていない千紘。今はそれがありがたい。 静かに部屋を出て、高良の部屋のドアをノックする。すぐに高良が出てきて部屋に入れてくれた。 「悠介?誰が来たん?」 「会長だよ。」 何回か見たことはある。以前より少し痩せたように見えるその人。 「あ······楠本旭陽です」 「赤目偉成です。高良とゆっくりしててください。」 キッチンに入ってご飯の準備をする。 ここからは2人の会話がよく聞こえた。 「何で会長がわざわざ作ってくれんの?」 「んー?俺が料理ができないからだよ」 「そんなん悪いやん。寮食でもいいのに」 「寮食はまだ食べれないでしょ?いいんだよ、会長に甘えようね。」 調理器具を取るために振り返ると、2人がキスをしてる姿が目に入った。 襲われたって聞いたけれど、そうして2人がスキンシップをとれるのは良かった。 怖くてもう二度とそういう事が出来ないとなると、お互いに辛いだろうし。 「悠介」 「何?」 「······桃飲みたい」 「いいよ。取ってくるね」 高良がキッチンにやって来て、冷蔵庫からジュースを取り出す。 「ちゃんと会話はできるんだな」 「できるよ。塞ぎ込んではいるけど、俺とはちゃんとコミュニケーションはとれる。」 「キスもできるようだしな。」 「あ、見てたの?可愛いでしょ」 ジュースをコップに入れて、すぐに戻って行った高良は、本当に番を大切にしているらしい。 野菜を切り終えて、鍋に入れていく。火にかけて野菜が柔らかくなっていくのをぼんやり眺める。 もし、千紘が同じ目に遭ったらどうしよう。 俺はどうしてやるのが正解なんだろう。 高良の様に、そばにいてやることが1番なのだろうけど、それだけじゃきっと、俺の気が収まらない。 鍋の準備が出来て高良を呼んだ。 うどんの事も説明して、部屋を出ようとすると楠本先輩に呼び止められる。 「あの······ありがとうございます」 「いえ。お口に合えばいいんですが」 そう言って軽く会釈して部屋を出た。 あの小さい体で、今も襲われた恐怖に耐えているのだと思うと、可哀想で仕方がなかった。

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