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第328話

お腹に回っていたその手を掴んで、ニギニギとして遊ぶ。 「どうしたの?」 「ううん」 「最近旭陽が明るくなってきて嬉しい。」 そう言いながら、項にキスをしてくる悠介。それがちょっと擽ったい。 「悠介がおってくれるから、嫌なこと考えんで済むねん。ありがとうね」 「そんなこと言われたら嬉しくて······ああ、もっと旭陽に触りたいよ。」 胸がドキッとした。 くるっと振り返って悠介を見る。 濡れた髪を後ろに撫で付けている。いつもよりずっと妖しい雰囲気があって、頭の中で警鐘が鳴る。 「旭陽?」 「······悠介がエロい」 「え?」 悠介の首に腕を回して、顔を近づける。 ちゅ、と唇に唇を合わせて、目をじっと見た。 「······抱いて」 「······まだ怖いでしょ?無理しないでいいよ。こうやって触れてるだけで幸せだから。」 今度は悠介の方からキスしてくる。 ちゅ、ちゅっと遊ぶようなキスをする度に、心が痛い。 「嫌や。もう大丈夫、な?」 「······何でそんなに焦ってるの?」 悠介がそう言って俺の腰に腕を回す。 足の上に座らされて、また悠介にもたれる。 「そりゃ、焦りたくもなる」 悠介の顔を見れずに、水面に視線を落とす。 「悠介は俺の事を1番に考えて、優しくしてくれるのに、俺は悠介に何をしてあげれてない。」 「······そんなこと気にしてるの?」 「そんな事やない」 ざばっとお風呂から出てタオルで体を拭いた。 追いかけて出てきた悠介も体を拭く。 服を着てリビングに出る。 別に、怒ってるわけじゃない。 「旭陽」 「悠介はわからんかもしらんけど、俺にとってはそんな事やないの。それをわかってとは言わんけど······」 「俺は旭陽がそう思ってくれてたことが嬉しいよ。でも、今は旭陽自身のことを1番に考えていてほしい。」 そんなん言われたって、焦る気持ちは落ち着いてはくれない。 「ごめんね、こんな······情けなくてごめんね。」 「情けなくなんてないよ。」 まだこの部屋に篭もって、出られないのが嫌。 悠介にも学校生活があるのに、巻き込んでしまってるのが嫌。 どれもこれも情けない行動やのに、悠介は怒りもしないで受け止めてくれる。 なのに、何の恩返しもできない。

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