335 / 876

第335話

教室まで悠介に送られて、いざ中に入ると緊張して体がいつもみたいに動かんかった。 席に着いて、誰にも気づかれへんように小さく息を吐いて膝の上で拳を握る。 「──楠本」 「っ!」 クラスメイトに話しかけられて体が大袈裟に震えた。 前の悠介がクラスメイトのベータに怒った時から、からかわれたりすることは少なくはなったけど、無くなってはいない。 何を言われるのかわからんし、この前襲われたことを言われたなら、辛くなるのはもう既に分かっていたから、体にぐっと力が入る。 顔を上げるとネクタイが目に入って、荒くなりそうな呼吸を抑えて相手の顔を見た。 「······高良に話があるんだ。その事を高良に伝えて欲しい」 「······え?」 考えてもみなかった話で反応が少し遅れる。 悠介に話?それならさっき話しかけたら良かったのに。 「この前あいつが怒ってるところ見て、なかなか自分から話しかけれないんだよ。頼む」 「······いい、けど。名前は?」 「筒井だ。ていうか同じクラスなのに覚えてねえのかよ」 「ごめん」 でも話したことないんやから仕方ないと思うけど。 「あの······放課後でいい?生徒会もあるから、ちょっと遅くなるかもしらんけど······」 「いいよ。その代わり時間潰し付き合って」 「え······あ、わかった」 頷いて、スマートフォンを取り出し今話したことについて悠介にメッセージを送った。 すぐに返事が来て、その画面を筒井に見せる。 「いいよって」 「おう。サンキューな」 いつの間にか緊張が解けていた。 筒井が離れていって、まだ持っていたスマートフォンの画面を見る。 「············」 さっき別れたばっかりやけど、もう悠介に会いたい。 それがちょっと恥ずかしい。 でもそう思える自分が少し成長したんやないかって、そんなふうに思えた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!