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第340話 千紘side

あと1ヶ月で3年生の卒業式だ。 生徒会もいよいよ忙しくなってきて、最近は高良先輩がよく偉成に文句を言っている。 どうやら、卒業で旭陽先輩がいなくなってしまうから、少しでも長く一緒にいたくて生徒会を早く終わらせて寮に戻りたいらしい。 「旭陽と居たいんだよ!2人はもう1年あるけど、俺はもう1ヶ月しかないの!」 「勝手にしろ。」 偉成が鬱陶しそうにそう言うと、高良先輩は嬉しそうな表情をして急いで部屋を出ていく。 「あいつは自由過ぎて困る」 「東條先輩」 項垂れている東條先輩は、高良先輩の分の皺寄せが来ると思っているのか、心の底から嫌そうだ。 「東條先輩安心して!俺が高良先輩の代わりを······!」 「東條よかったな。うちの千紘が頑張ってくれるらしい」 「高良はあれでも頭がいいからな。本当に高良の代わりになればいいがな」 「誉、千紘の悪口を言うつもりなら、お前に全て任せるが?」 「これは悪口じゃないだろ」 高梨先輩はちょっと苦手。 でもいつも何かをする時は的確な指示をくれるし、本当は優しい人なんだと勝手に思ってる。 「答辞は高良の番が読むんだろ?送辞はどうする?」 「高良でいいだろ。」 東條先輩が冷たくそう言った。 でもここに居た全員はその言葉に賛成だ。 「後で俺と千紘から伝えておく」 「頼んだぞ」 旭陽先輩の事は東條先輩も高梨先輩も知っていた。 成績優秀で特待生らしい。そして卒業生の中では1番いい就職先だし、答辞を読む人はすぐに決まったと聞いた。 「オメガなのに成績優秀だとは素晴らしいな」 「おい東條、オメガを少しでも馬鹿にするような発言はやめろ。」 「······悪かったよ」 偉成に怒られてちらっと俺を見た東條先輩。俺は苦笑を返すしかない。

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