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第345話

そんな時、のんびりとした声が聞こえた。 「何してんのー?」 「っ!」 驚いて声のした方を振り返ると、さっきスマートフォンで見た男が立っていた。 「悠介、そいつ?俺にくれるっていうオメガ」 俺の隣をすり抜けて、高良の肩を叩く。 それから遠野を見てニンマリと笑った。 「あ······ぁ······」 「あはは、怯えてんじゃん。悠介、落ち着けよ。」 高良が遠野から手を離す。 代わりにその男が遠野の前にしゃがんだ。 「だ、れ······」 「初めまして。俺は相楽 (あきら)。アルファです。」 高良が忌々しそうに遠野を見ている。 「俺と番になろうか、オメガちゃん。」 「つ、番······?」 「うん。でもまずはお試し期間ね。1ヶ月一緒に暮らそう。」 相楽の提案に眉を顰めた。 そんな生温い仕返しでいいのか。 「は、はい······。」 「じゃあ決まりね。俺の家に行こう。」 2人が立ち上がって俺達を見る。 「──1つ教えてあげるよ」 急に高良がそう言ってにっこり笑った。 「相楽は俺の知るアルファの中で、1番性格が歪んでる。これからの1ヶ月で、お前の体が今のままだといいね。」 「そ、それ、どういう······」 「おい悠介、怖がらすなよ。」 「だってそうだろ。この間捕まえたオメガは結局耐えられずに逃げたんだろ?」 「そうだな。あいつもいい所まで調教できたんだけどな。」 ニヤニヤ笑う相楽。 遠野の顔が絶望の色に変わった。 「お前の体も俺が変えてやるからな」 「ひっ······!」 遠野の履いていたズボンが色を変える。 そのまま、また地面に座り込んだ。 「あーあ、漏らしたのかよ。まずは排尿管理から始めるか?」 そう言って楽しそうにする相楽を見て、高良は満足そうに笑っていた。

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