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第346話
「他の奴らのことも任せとけ。あ、そうだ。こいつの体が変わったら披露してやる。」
「そう、ありがとう」
相楽はそう言って高良と俺に手を振った。
俺達はそこで別れる。
「あれでいいのか?」
「あいつに任せたら間違いないよ。」
「へぇ。信頼してるんだな」
「あいつ自身じゃなくて、あいつの腕をね。」
来た道を帰る。
とりあえずは高良が手をあげなくてよかった。
「やる事終わったら、ちょっと気が抜けたかも。疲れた気がする」
「早く帰らないと千紘も楠本さんにも勘づかれるかもしれない。」
「うん······。電車で寝るよ」
生徒会室に戻って、急いで服を着替えないと。
時間はまだある。駅までゆっくり歩く。
「──あら、悠介君じゃない?」
「あ······お婆さん。」
道を歩いていると、声を掛けられて高良の歩みが止まる。
高良の視線を追いかけると、1人のお婆さんが立っていた。
「お隣はお友達?」
「は、はい。」
「初めまして。赤目偉成です。」
この場所と高良を親しげに名前で呼んでいることから、楠本さんのお婆さんだということがわかって、挨拶をする。
「どうしたの。旭陽は?」
「学校です。今日はちょっと······抜け出してきて。」
「あらあら。まあ、たまにはいいわよね。」
ふふっと上品に笑うお婆さんに、高良も俺も少し動揺していた。
「今から帰るの?」
「はい。そろそろ学校に戻らないと、旭陽にバレるし。」
「そうね。あの子は隠し事は嫌がるから、バレないように気を付けてね。」
お婆さんはこれからどこかに向かうところなのだろうか。
腕には綺麗な花束を抱えていた。
「はい。お婆さんはどちらに?」
「今からお墓参りに行くの。」
「お墓参り?」
「ええ。旭陽のお母さんの。」
思わず高良の方を見た。
楠本さんのお母さんは亡くなっていたのか。高良はそれを知っていたようで、穏やかな表情で「そうですか」と返している。
「今度、旭陽と一緒に行かせてもらいます。」
「ええ。きっと喜ぶわ」
そう会話をして、別れた。
電車に間に合わなさそうで、少し走りながら駅を目指す。
「旭陽には秘密だよ」
「わかってる」
今日あったことは、俺達だけの秘密。
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