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第351話

*** 「え、今日ですか?」 休みの日の朝、母さんから電話があった。 いい加減に旭陽を連れて来いっていう促進の電話。 「旭陽······」 「何?何でそんな死にそうな顔してんの?死ぬの?」 「同じような事だよ。······母さんが今日の内に旭陽を連れて来いって。」 「あー······そう、やね。そろそろ行かんとあかんよね、卒業する前に挨拶しとこ。」 旭陽はすぐに部屋着からちゃんとした服に着替えた。切り替えの速さがすごい。俺には到底真似できそうにない。 「はよ準備しいや。」 「わかってるけど······気分が乗らないんだよ」 「そんなん言うてたら認めてくれへんで。はよ行こ」 旭陽にそう言われて服を着替え、朝早くに寮を出た。 家に向かうまでの電車内。旭陽がすごく緊張しているのが目に見えてわかる。 「旭陽、母さんと父さんに何を言われても気にしないで。人を貶さないと生きていけない人達なんだ。」 「別に気にしやんよ。俺のことは悠介が分かっていてくれてたら、それで充分。」 「旭陽······っ」 「何その顔。」 可愛いことを言うから、心底嬉しいっていう表情をしたのに冷たい言葉を浴びせられて撃沈した。 「あ、駅着いた。行こ」 「うん」 駅に着いて改札を抜けると、お手伝いさんがそこに居た。 迎えに来てくれたみたいで、傍には車がある。 それに乗り、家にまで向かう道中で、旭陽が俺の手をキュッと握ってきた。 「き、緊張する······」 「大丈夫。いつもの旭陽で居てね。」 額にキスをすると旭陽がふんわり笑う。 そして家に着いて車から降りた。 旭陽の手を取りながら、家に入る。 「ただいま」 「おかえりなさい、悠介。」 中に入ると早速母さんがいて、スーッと体温が下がっていった。

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