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第352話 旭陽side
悠介の雰囲気が急に冷たくなった。
それに驚きながらも、手を離して悠介のお母さんらしきその人に頭を下げる。
「初めまして。楠本旭陽といいます。」
「旭陽さん。どうぞこちらへ。」
悠介が足を進めて、俺はその後ろを歩く。
「悠介、貴方はここに居なさい。旭陽さんはこれから医師に診せるから。」
「······旭陽にその話はしてません。それに突然そんな事をするなんて失礼だと思いませんか。」
「それでも、家の為です。······旭陽さん、今から貴方にブライダルチェックを受けてもらうわ。」
挨拶もちゃんとしてへんのに、急にそんなことを言われてびっくりする。
「ブライダルチェックって······?」
「妊娠できるか診てもらうの。」
思わず苦笑いをしてしまった。
それを見た悠介が申し訳なさそうな顔をする。
「あ······わ、わかりました。」
「じゃあ早速移動しましょう。」
お母さんに連れられて部屋を移動する。
移動した先にはお医者さんがいて、その部屋に放り込まれた。
「お願いします······」
まずは問診票を書かされて、その後に血液を採取された。
「じゃあ今度は下を脱いでこちらに寝転んでください」
「はっ!?」
驚いたけど、検査なら仕方ない······。そう思って早く検査が終わるように祈った。
***
検査を終えて悠介の元に戻る。
いつの間にかさっきの冷えた雰囲気とは違って、暖かくて柔らかいいつもの悠介に戻っていた。
「ごめんね。大丈夫?」
「······何か、いっぱい触られたから変な感じ。」
「そう······。ちょっと休もうか」
ここは悠介の部屋らしい。
ベッドに寝かされると、思っていたよりも体は疲れていたみたいで、このまま眠ってしまいそうやった。
「びっくりした。お母さんに会った途端悠介が急に冷たくなったから。」
「······ごめんね。母さん達の前では自分の感情をなるべく殺さないと冷静でいられないんだ。」
そういうものなんやろうか。
いや、きっと悠介の家は特別。
凄くアルファっていう性に拘っているように思える。
「検査結果が出るのは1週間後だって。またここに来ないといけない。」
「仕方ないよ。俺は大丈夫やから気にしやんといて」
「······ごめんね」
悠介に抱き締められて、その背中に手を回した。
さっきから謝ってばっかりの悠介が少し可哀想に思えて。
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