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第359話
──あ、旭陽だ。
「あっ!高良先輩!旭陽先輩だよ!」
千紘ちゃんが拍手をして旭陽を迎える。
1度俺達の前を通り過ぎて、校門を出ると校舎の周りを軽く回って戻ってきた。
「旭陽!」
「悠介ー!」
人混みの中で俺を見つけてピョコピョコ飛んでいる旭陽。そんな事しなくても、俺は直ぐに旭陽を見つけられるのに。
「捕まえた」
「ちょ、やめろって!」
旭陽が走ってきたから、その勢いのまま強く抱き締める。フガフガと腕の中で暴れる旭陽。肩を掴んで体を離し、唇に自らのそれを合わせた。
「······お前、泣いたやろ。」
「······気付いた?」
「気付く。ちょっとだけ目元赤いし。送辞読む時も、うって声詰まってた。」
「恥ずかしいな」
旭陽はくすくす笑って、「これ持って」と先程貰ったであろう花束を俺に押し付ける。言われた通りにそれを受け取ると、旭陽が自分のネクタイを外しだす。
「どうしたの?結び直すの?俺がしようか?」
「違うよ」
「違うの?」
今度は旭陽の手が俺のネクタイに伸びて解かれる。
あ、何をされるかわかった気がする。
さっきまで旭陽が巻いていたネクタイが俺の首にかけられて、結ばれていく。
その手を見ながらニヤニヤしてしまう。だってこんなに嬉しいことなんて滅多に無い。
「俺からのプレゼント。ネクタイあげる」
「······最高のプレゼントだよ。」
「あはは、また泣きそうなってる!」
ついに我慢できなくなって目から涙が零れる。笑っていた旭陽だけど、だんだんと表情が歪んで旭陽の目からも大粒の涙がポロポロと零れていった。
「俺、1年待ってるから······」
「うん。俺が卒業したら直ぐに結婚するからね。それまで待っててね」
まだ、乗り越えないといけない壁がある。
けれどきっと俺達なら上手くいくはず。
「卒業おめでとう、旭陽。」
不安を抱えながら、今日、旭陽は卒業した。
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