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第360話 千紘side

つかの間の春休みも終わり、俺は2年生に、偉成は3年生になった。 特に何が変わったわけではない。けれど新学年になったばかりだからか、気持ちが浮かれている。 「偉成ぇ!」 「どうした」 授業が終わった放課後、生徒会室に飛び込むとメンバー全員がいたけど、関係無しに一目散に偉成に飛びついた。 けれどこれはよくあること。誰も特にリアクションは取らない。 「1年生が······俺よりずっと身長が高い······。それにさっき同級生と間違われたのっ!!」 「千紘は小さくて可愛いからなぁ。それに童顔だ。俺はその顔が大好きだけどな」 「そんなことはどうでもいい!」 偉成の胸倉を掴んで顔を近づける。 「オメガだって馬鹿にされた!!ムカつく!!」 「落ち着け」 「年下のくせに!!」 手を離して偉成の胸に沈むと、頭を優しく撫でられる。 「おい、うるさいぞ松舞。仕方ないだろ。そう言われるのは初めてでもないんだろうし」 「誉やめろ。誰だって言われて傷つくことがある。」 偉成の優しい匂いが心を癒してくれる。 「他には何か言われたのか?」 「······俺が番になってやろうかって、からかわれた。俺にはこんな立派な番がいるのに」 「何だそれは腹が立つな。千紘はもう俺のものだぞ。」 ギューッときつく抱き締められる。 それを見た高良先輩がクスクスと笑った。 「2人を見てたら旭陽に会いたくなってきた。」 「旭陽先輩には前の土曜日に会いに行ったんじゃなかったっけ······?」 「行ったよ。相変わらず可愛かった」 それからベラベラと旭陽先輩との惚気話をしだした高良先輩。高梨先輩と東條先輩は捕まらないように逃げたのに、匡は上手く逃げきれずに話を聞いてあげている。 「わかったわかった。可愛いんだな」 「そうそう。」 匡の溜息が聞こえてきたけど、俺はそれどころじゃない。 偉成の匂いを胸いっぱいに嗅ぎながら、次1年生に馬鹿にされたら言い返してやる!と心に決めた。

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