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第363話
登校すると匡と優生君はもう教室にいた。新学年になっても同じクラスでいれたことが嬉しい。2人に向かって「おはよう」と声をかける。
「おはよう千紘君。ねえ聞いて!さっき1年生にセクハラされたの!」
「セクハラ?」
「そう!俺が番になってやるよとか、どうせ番いないんだろとか言って!匡君がすぐに退治してくれたんだけど腹が立っちゃって······」
オメガはベータやアルファより小さいし、柔らかい感じだから実年齢より下に見られることは少なくない。でも、だからって失礼な言葉を掛けてもいいわけじゃない。
「······匡」
「な、なんだよその顔······やめろよ、危ない事は考えるな。落ち着け」
「匡の力で1年生をギタギタに······」
「アウトだ千紘。それに俺にそんな力はない」
優生君にすらも「それはダメだー!」と言われてしまった。
席に着いてこの問題の解決策は無いのかと頭を働かせる。
「はぁっ!ムカつく!」
でもそんな簡単に思いつかなくて、机に突っ伏した。そんな俺の頭を優生君が優しく撫でてくれる。
「千紘君も同じようなことに言われたんだよね。昨日匡君から聞いたよ。」
「······失礼ってことわからないのかな。ベータやアルファだから何でもいいって思ってる?俺には理解できないよ。」
文句を言っているとホームルームが始まるチャイムが鳴った。
担任も変わらず麻倉先生だから、チャイムが鳴って暫くしてから現れる。
「昨日他のクラスのオメガが1年生と喧嘩したらしい。そういう場面を見たら先生を呼ぶように。オメガはベータやアルファより小さいし弱い。少しでも危ないと思ったらすぐに間に入ってやれ。あと松舞と小鹿、お前達も気をつけるんだぞ。」
麻倉先生の言葉にこくこくと頷く。
きっと喧嘩をしたオメガの人も、失礼なことを言われたに違いない。
勝手にそう思った俺の心はだんだんと荒んでいく。
「あ······体だるい。」
そんな時、発情期前の症状が体に現れて、はぁ······と深い溜息を吐いた。
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