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第364話

体育の時間。 だるい体を引き摺って体育館を目指し廊下を歩く。匡と優生君には先に行ってもらった。俺に付き添わせて一緒に遅刻したら申し訳ないから。 そんな時に限って、失礼な1年生達が現れた。 ゆっくり歩く俺に付き纏うそいつらは、俺の項に契約した印があるのに気付くと冷やかしてきた。相手はどんなやつなんだとか、俺達の方がいいぞだとか、俺には全くそう思えない。 「うるさいな。早く教室戻れよ。」 「あ?オメガがアルファにそんな口きいていいと思ってんのかよ」 「思ってるよ。少なくとも君達は俺の年下だしね。」 まだ真新しい制服。誰が見たって新入生だとわかるはず。 「はぁ?お前先輩なの?」 「そう。だから付き纏うのやめてくれないかな。あと先輩だから敬語使って。」 「お前みたいな貧弱が先輩とか笑える。お前の番見てみてぇよ!」 貧弱······?いや、確かに俺はヒョロヒョロしてるとは思うけど、そこまで言われる筋合いはない。 「俺の番は怖いから、君達が会えば怖くて逃げるんじゃない?」 「おい、馬鹿にすんなよ。」 肩を持たれて壁に押し付けられる。何でそんなちょっとの事で怒るんだと思いながら、その子を見上げた。 「馬鹿にしてない。本当の事だから。」 「てめぇっ!」 大きな声が鼓膜を揺らす。 また罵声が浴びせられるのかと思いきや、大好きな匂いがした。 「お前達、誰の番に手を出してるのかわかってるか?」 ああ、安心する匂い。 発情期前だから、その匂いを嗅ぐだけで頭がクラクラしてくる。 「げっ、あんた······生徒会長」 「生徒会長ってことは赤目じゃねえか!やべえ······逃げるぞ!」 肩から手が離れて、1年生達が走って逃げていく。すぐに偉成が駆け寄ってきてくれて、俺の背中に手を回した。 「匡と小鹿は?」 「先に行ってもらったの。発情期前の症状が出てて、体がだるかったから······」 「何ですぐに俺を呼ばないんだ。寮に帰るぞ」 「ぁ······もう、大丈夫なのに······」 お姫様抱っこされて、俺の教室に1度戻り、荷物を持って寮まで向かう。 「歩けるよ」 「ダルいんだろ。大人しくしてろ。」 「······偉成、授業は?」 「少しくらい遅れても問題ない」 部屋に帰るとすぐにベッドに寝かされた。 額にキスされ、唇がそのまま降りてきて、俺の唇に触れる。ほんのり広がる熱が心地良い。 「それじゃあ、俺は行くけど、千紘はゆっくりしてるんだぞ。何かあったら電話してくれ。」 「わかった」 もう一度キスをして、そして離れる。 体の熱が上がってきたような気がして、深呼吸をして目を閉じた。

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