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第367話
小さなアラームの音が聞こえて目を覚ます。
千紘は音に気付かず眠っている。俺の服を掴む手をやんわりと離させ、起き上がって伸びをした。
ベッドから出て顔を洗い、昨日できなかった課題をさっさと済ませ、弁当と朝ご飯を作る。
朝ご飯を食べて、歯磨きをし、制服を着て学校に行く準備を終えてから千紘に声をかけた。
「おはよう」
「······偉成ぇ······?おはよぉ」
「今日は千紘はお休みだ。朝ご飯は作っておいたから、食べたい時に食べること。昼には1度戻ってくるよ」
「わかった」
額にキスをして寝室から出る。
丁度高良も部屋から出てきて、「おはよ」と声を掛けてきた。
「おはよう」
「千紘ちゃんは?」
「発情期が始まりそうだから休ませてる」
「あらら。会長は休まなくていいの?」
「千紘が気にするから」
同じ教室に入り、自分の席に座る。
前には高良が座って、俺を振り返るとまた話をしだす。
「そういえば千紘ちゃんは巣作りする?」
「巣作り?」
「あれ、知らない?オメガが発情期の時に番の服とか······匂いのするものを集めて巣を作るんだ。安心して子作りできるように」
「へぇ。それは可愛いものだな。」
想像すると愛しさしか湧いてこない。
片付けるのが面倒だとか、そんなことは思わなかった。
「楠本さんはするのか?」
「いや、したことないね。してくれてもいいんだけど。」
ニコニコ笑う高良をぼんやり眺め、ホームルームが始まるチャイムが鳴ると同時に担任が入ってきた。
「出欠取るぞ」
担任がそう言うと高良は前を向いて、1番初めに名前を呼ばれた俺は「はい」といつも通りに返事をした。
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