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第369話

結局、その日の内に千紘が発情期が訪れることは無かった。 「千紘ちゃん辛いだろうね。」 「ああ。熱っぽかったし、あれが明日も続くようなら先にこちらから仕掛けるか悩む。誘発してでも発情期を来させる方がが楽かもしれん」 「やだ破廉恥」 「面白がるな」 放課後になって、俺と高良は生徒会向かう。生徒会室に行くと東條と匡がいて、誉の姿は無かった。 「誉は?」 「寮に忘れ物したんだと。」 「珍しいな」 荷物を置いて頼まれている仕事を終わらせようと急いで頭を動かす。 その時、スマートフォンが震えて、画面を見れば誉からの電話だった。 「誉か?どうした」 「今すぐに寮に戻れ。松舞が発情してる。」 「何?」 焦って電話を切り荷物を片付ける。 皆に一言言って生徒会室を飛び出して寮に帰る。 部屋の前で誉が腕を組み立っていて「誉!」と声を掛けると俺を睨みつけるように見た。 「松舞にも言ったが、発情期が近いなら外を出歩かせるな。」 「······千紘が外にいたのか?」 「ああ。おかげで他のアルファが松舞に集ってた。襲われそうになっていたぞ」 「何だと!?」 部屋の中から酷く甘い匂いがする。呼吸が荒くなる。 「番がいても、発情期のオメガと性行為をするという事はアルファにとっては大きな快感になる。」 「······わかった。今後は部屋から出させないようにする。」 「ああ。もう行ってやれ。苦しんでると思うから」 誉に礼を言って部屋のドアを開ける。 一気に香ってきたフェロモン。膝から崩れそうになった所を誉に支えられた。 「ほら、早く」 「ああ」 ドアを閉めた誉。 俺は千紘のところまで急ぐ。 ベッドにいると思って寝室を開けたが千紘の姿がない。どこに居るんだ······と探していると、クローゼットからガタッと音がした。

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