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第373話 旭陽side
卒業して1ヶ月が経つ。
この前悠介が家まで来て、久々にくっついて、離れたくないなって帰るのを渋ってた。
「また来たん」
「来たよ!」
なのに、今日もまた悠介がやって来て、俺を強く抱きしめる。悠介の肩に頬をつけて「暇なん?」と聞いてみる。
「例え忙しくても旭陽に会うためなら俺は何だってするよ!」
「周りに迷惑かけたらあかんねんで。生徒会は?」
「会長と副会長がいれば何とかなるし、東條に、会長の弟だっているんだから百人力って感じ。」
「······人任せやなぁ」
まあ、それでも俺に会いに来てくれたんやから強くは言えん。
家に上がった悠介は、お婆ちゃんと、もう退院したお爺ちゃんに挨拶をしてから俺の部屋に行く。
「やっぱり旭陽といると安心するよ。1人の寮はただ広くて寂しいだけ。」
「······あっそ」
嬉しいけど、素直にそう言われへん。
やって、俺達には期限がある。
「どう、体は」
「何もない」
卒業してから1ヶ月。
体には何の変化もない。
俺達に残るのはあと11ヶ月。その間に妊娠しないと番を解消させられる。
「······嫌だよね、毎回会う度にこんな確認されて。ごめんね、俺······気持ちが焦ってるみたいだ。」
「ううん、仕方ないよ。俺の方こそごめんね。」
俺の体は妊娠しにくい体。
発情期にセックスしまくれば、何とかなんのかな。
「発情期······ちょっと遅れてるけど、そろそろ来ると思う。」
「あ······そうだよね。前が12月だったから、え、それじゃあ本当に1ヶ月くらい遅れてるよね。大丈夫なの?」
「うん、特に何ともないから多分。」
ベッドに座った悠介の前に立つ。
柔らかい悠介の髪に指を差し入れた。
「旭陽?」
「好きって、言うて」
「······何、すごく可愛い。好きだよ」
悠介の腕が腰に回って、俺の胸に悠介の頭がトンって触れる。
「発情期来たら連絡するから、すぐに来て。」
「うん。当たり前だよ」
「······抑制剤飲まんとこうと思うけど、無理って思ったら飲むから。それまでに間に合って」
「あはは、意地悪だなぁ。それなら発情期前の症状が現れた時に教えて欲しいんだけど。」
悠介の声が胸に響く。その感覚が面白い。
「悠介。俺も悠介のこと好きやよ。」
「あー······もう1回」
「無理」
顔を上げた悠介と目が合って、その瞬間に唇が合わさる。
じんわりと感じる熱に溺れてしまいたい。
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