373 / 876

第373話 旭陽side

卒業して1ヶ月が経つ。 この前悠介が家まで来て、久々にくっついて、離れたくないなって帰るのを渋ってた。 「また来たん」 「来たよ!」 なのに、今日もまた悠介がやって来て、俺を強く抱きしめる。悠介の肩に頬をつけて「暇なん?」と聞いてみる。 「例え忙しくても旭陽に会うためなら俺は何だってするよ!」 「周りに迷惑かけたらあかんねんで。生徒会は?」 「会長と副会長がいれば何とかなるし、東條に、会長の弟だっているんだから百人力って感じ。」 「······人任せやなぁ」 まあ、それでも俺に会いに来てくれたんやから強くは言えん。 家に上がった悠介は、お婆ちゃんと、もう退院したお爺ちゃんに挨拶をしてから俺の部屋に行く。 「やっぱり旭陽といると安心するよ。1人の寮はただ広くて寂しいだけ。」 「······あっそ」 嬉しいけど、素直にそう言われへん。 やって、俺達には期限がある。 「どう、体は」 「何もない」 卒業してから1ヶ月。 体には何の変化もない。 俺達に残るのはあと11ヶ月。その間に妊娠しないと番を解消させられる。 「······嫌だよね、毎回会う度にこんな確認されて。ごめんね、俺······気持ちが焦ってるみたいだ。」 「ううん、仕方ないよ。俺の方こそごめんね。」 俺の体は妊娠しにくい体。 発情期にセックスしまくれば、何とかなんのかな。 「発情期······ちょっと遅れてるけど、そろそろ来ると思う。」 「あ······そうだよね。前が12月だったから、え、それじゃあ本当に1ヶ月くらい遅れてるよね。大丈夫なの?」 「うん、特に何ともないから多分。」 ベッドに座った悠介の前に立つ。 柔らかい悠介の髪に指を差し入れた。 「旭陽?」 「好きって、言うて」 「······何、すごく可愛い。好きだよ」 悠介の腕が腰に回って、俺の胸に悠介の頭がトンって触れる。 「発情期来たら連絡するから、すぐに来て。」 「うん。当たり前だよ」 「······抑制剤飲まんとこうと思うけど、無理って思ったら飲むから。それまでに間に合って」 「あはは、意地悪だなぁ。それなら発情期前の症状が現れた時に教えて欲しいんだけど。」 悠介の声が胸に響く。その感覚が面白い。 「悠介。俺も悠介のこと好きやよ。」 「あー······もう1回」 「無理」 顔を上げた悠介と目が合って、その瞬間に唇が合わさる。 じんわりと感じる熱に溺れてしまいたい。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!