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第376話

「中学でも虐めまでとは言わんけど、陰口言われたりとか、笑い者にされたりすることはあってん。でもタクがおったから我慢できた。一緒に白樺受けるために勉強して、しんどかったけど楽しかったなぁ。」 「······でも、あの子は落ちちゃったんだね。」 その悠介の言葉にこくりと頷く。 「高校入れたけど、また陰口に幼稚な悪戯にあって、こんな時タクがおってくれたらなぁって思ってた。長い休みは家に帰って、でもタクも忙しくてなかなか会えんかったから、その間にいつの間にか溝が深くなってたんやろね。俺もタクに会いにくくなった。友達って呼べるのかわからんくなった。」 ベラベラと話すのは、いつの間にかタクとの事になっていた。 悠介はほんまに、聞いていて気分はよくないと思う。それやのに、相槌を打つだけで、嫌な顔はしない。 「この前の正月に、お婆ちゃんに言われたんよ。友達に会っといでって。それでタクの事を思い出して、連絡した。その時に俺が話しすぎたみたい。タクの気持ちなんか何も考えんかった。それでタクに酷いことさせてしまった。」 タクの事は許せない。 でも、タクの事を考えないでいた自分が、1番の元凶な気がする。 「なあ、タクに何もしてへん?仕返しとか、そんなんしてへん?」 「······してないよ。大丈夫」 一瞬の間。それが俺の不安を煽る。 悠介の手を離して、じっと目を見る。 「ほんま?」 「本当」 今度ははっきりとそう言った悠介に胸を撫で下ろした。 「何もしてないから安心して。でも、匠海君だっけ?彼とはもう会わないで。」 「わかった。ていうか俺は今それどころちゃうしなぁ。過去は変えられへんからもう置いといてさ、俺······妊娠できやんかったらどうしよう。番解消されて、死んじゃうかな。」 未来への不安を口にすると、悠介に強く抱き締められた。思わず悠介の胸に手をついた。

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